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 EBMの実践と臨床研究について

EBM(Evidence based medicine)の実践

 当院救急総合診療科ではEBM(根拠に基づいた医療)を大切にしています。その理由として歴史的に経験・感覚的に有用と判断されていた多くの治療方法が、のちに無効であった、あるいは有害であったことが判明しているためです。Do No Harmという言葉があります。すべきか分からない治療はしないほうがよい、という格言ですが、我々医師は「効果があるか分からない治療を行う際には害を与えているかも知れないと考えるべきである」という戒めとして使われます。このような観点から当院では数多くのガイドラインや最新のエビデンスに基づいた教科書(UpToDate®)を参考に日々の診療を行っています。また世界標準であるPRISMA声明・CONSORT声明・STROBE声明・STARD声明などに基づいた抄読会(批判的吟味)を毎週行っています。

Evidenceの構築

 総合診療領域ではEBMの実践は一般的に行われていますが、Evidenceの構築は臓器別専門医が行うことが多かった歴史があります。臓器別専門医は同一疾患を多数診療する機会に恵まれ、当該領域の知識が豊富なため、良質なEvidenceの構築に貢献してきました。今後もそれが大きく変わることはないと思いますが、いくつかの問題点が生じてきています。まず高度に専門化された現在の医学において、一般的でありふれた疾患ほど対応する専門家が少ないという現状があります(風邪専門医はいない)。このような“ありふれた疾患”はプライマリケア医や総合診療医が多く診療していることと思います。また診断学や複数要因が関与する病態は総合診療が得意としている分野でもあり、こういった疾患・分野においては我々総合診療医がEvidenceを構築していく責務が生じてきています。

当院での取り組み

 
 150床の市中病院で臨床研究を積極的に行っている病院は少ないかも知れません。しかし当院には臨床研究(主に非介入試験)を行うに際して恵まれている点がいくつかあります。まず高度専門施設の疫学データはバイアスが大きくかかってしまいますが、当院では軽症から重症まで広く門戸が開いていますので一般社会の患者層に近いと推測されます。また救急外来から入院する8割の患者さんが総合診療科に入院しますので一貫した状態の把握が容易で疫学的データが集計しやすいメリットがあります。
 研究資金は病院からの研修教育費として捻出されることもメリットです。利益相反を伴うことなく本当に必要と思われる研究を行うことが可能です。倫理審査委員会は院内にあり迅速な審査が可能です。文献確保など必要なリソースは京都大学医学研究科 医学教育推進センターならびに広島大学病院 総合内科・総合診療科の協力で得ることができます。ネイティブ・スピーカーによる英文翻訳サービスもあります。

患者様へ

 当院では上記のように臨床研究に取り組んでおり、カルテ情報を統計処理し、学会や医学論文に発表することがあります。氏名・住所・電話番号など個人情報が明らかになることは決してありませんが、このような研究への参加に賛同しかねる方はいつでもお申し出下さい。
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