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成人スティル病
概要
若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis)のうち全身型はStill(1897)により発熱、多発関節炎、肝脾腫、全身リンパ節腫脹、サーモンピンク疹などの全身症状を特徴とする小児の熱性疾患、スティル病として報告されました。1971年のBywatersの報告(Bywaters EG. Still's disease in the adult. Ann Rheum Dis 1971 30(2):121-133)以来、16歳以上の発症例があることが知られており、成人スティル病と呼ばれています。
この病気を持つ方は人口10万人あたり2人程度です。一般的に20歳~40歳代の比較的若い成人が発症しますが、70歳以上でみられることもあります。男性より女性でやや多いとされています。
原因は不明ですが、遺伝素因やウイルス・細菌の感染など環境因子などを誘因として生じた反応性の病態で、様々な病因から結果的に生じる疾患と考えられています。活性化されたマクロファージという細胞からインターロイキン(IL)‐6,IL-1,IL-18,腫瘍壊死因子(TNF)といった種々のサイトカインが過剰に産生されているものと考えられており血清フェリチン上昇と相関しています。
症状
発熱・関節症状、皮疹が3大症状です。皮疹は色調がサーモンピンク調で、斑状、径数mm程度、丘疹状の発疹が体幹や四肢に見られることが特徴的で、しばしば発熱時に増強します。関節痛は手関節や膝関節などにみられ、多くは関節の腫脹も伴います。その他、咽頭痛やリンパ節腫脹もみられます。
検査・診断
炎症を反映する白血球増多、CRP上昇、赤沈亢進、補体価上昇や肝機能障害(85%)がしばしばみられます。また、本症の特徴として血清フェリチンの上昇が重要ですが、特異的ではないため感染症や悪性疾患との鑑別が重要です。
診断は感染症、他の膠原病、悪性腫瘍(とくに悪性リンパ腫)を除外した上で診断基準を適応します。日本では感度に優れるとされている(J Rheumatol.1996 Mar;23(3):495-7/Eur J Intern Med.2002 Mar;13(2):136-8) 山口(1992年)らによる分類基準が用いられています。
成人Still病研究班による分類基準(山口基準)
大項目
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39℃以上、一週間以上続く発熱
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2週間以上続く関節症状
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典型的皮疹(発熱時に出現するサーモンピンク疹)
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80%以上の好中球増加を伴う白血球増加
小項目
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咽頭痛
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リンパ節腫脹あるいは脾腫
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肝機能異常
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RF陰性及びANA陰性
除外項目
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感染症(特に敗血症、伝染性単核球症、パルボB19)
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悪性腫瘍(特に悪性リンパ腫)
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膠原病(特に多発性動脈炎、悪性関節リウマチ)
大項目2項目以上かつ、総項目数5以上で感度96.2%、特異度92.1%(J Rheumatol.1992 Mar;19(3):424-30)
治療
軽症例ではNSAIDsのみで軽快することもありますが、通常はステロイド投与が必要となり、患者さんの重症度に応じて中等量から大量用います。発熱や関節痛、検査所見が改善したのちステロイドは減量していきます。ステロイドを中止できる患者さんもいますが、ステロイドの減量が困難な例、減量すると再発する例もしばしば経験します。このような場合は、メトトレキサート(リウマトレックス®など)やシクロスポリン(ネオーラル®など)などの免疫抑制剤を追加することがあります。また、抗IL-6受容体モノクローナル抗体であるトシリズマブ(アクテムラ®)は小児のスティル病(全身型若年性特発性関節炎)では複数の臨床試験で有効性が示されている薬であり、全身型若年性特発性関節炎を成人が発症した疾患と考えられる成人発症スティル病でも効果が期待されています。また、汎血球減少や骨髄での血球貪食像を呈するマクロファージ活性化症候群へと進展し、治療抵抗性の場合には、血漿交換療法が治療選択肢として考慮されます。
経過
再発は比較的多くみられますが、全身症状の経過は一般に良好です。しかし、マクロファージ活性化症候群、DICなどの合併症を生じたときは重症化することがあります。また、炎症が持続してアミロイドーシスを生じたり関節炎リウマチのような関節炎が遷延することがあります。