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全身性エリテマトーデス

 

全身性エリテマトーデス(Systemic lupus erythematosus:SLE)は自己抗体(自分の体の成分と反応する抗体)が作られてしまうために、全身の諸臓器が侵されてしまう病気です。SLEは1万人に1人くらいが発病し、男女比は1対9前後で発症年齢は20~40歳が最も多く、若い女性に多い疾患です。全身の炎症により発熱・皮膚症状・関節症状などさまざまな症状や臓器障害を示し、よくなったり悪くなったりと慢性に経過します。 

 

分類基準 

SLEは症状や血液・尿・画像検査などの結果を総合的に判断します。

アメリカリウマチ学会が作成した分類基準(1997年改訂基準 アメリカリウマチ協会) を示します。

1.顔面(頬部)紅斑
2.円板状皮疹(ディスコイド疹) 
3.光線過敏症
4.口腔潰瘍(無痛性で口腔あるいは鼻咽喉に出現) 
5.非びらん性関節炎(2関節以上) 
6.漿膜炎
  a) 胸膜炎、または、b)心膜炎
7.腎障害
  a) 0.5g/日以上または+++以上の持続性蛋白尿、または、b)細胞性円柱
8.神経障害
  a) けいれん、または、b)精神障害
9.血液異常
  a) 溶血性貧血、b) 白血球減少症(<4000/μl)
  c) リンパ球減少症(<1500/μl)、または、d) 血小板減少症(<100,000/μl)
10.免疫異常 (a-cのいずれか)
  a)抗二本鎖DNA抗体陽性

  b)抗Sm抗体陽性

  c)抗リン脂質抗体陽性(1-3のいずれか)
    1)IgGまたはIgM抗カルジオリピン抗体の異常値、
    2)ループス抗凝固因子陽性、
    3)梅毒血清反応生物学的偽陽性、のいずれかによる
11.抗核抗体陽性 

 

上記項目4項目以上を満たす場合全身性エリテマトーデスと診断します。

Updating the American College of Rheumatology revised criteria for the classification of systemic lupus erythematosus. Hochberg MC. Arthritis Rheum. 40:1725, 1997
 

分類基準は2012に改訂されていますが、煩雑な割りに診断特性は向上せず(感度が高いが特異度が低い)広く用いられるには至っていません(指定難病の診断基準にも用いられなかった)。

臨床11項目

1. 急性皮膚ループス皮膚筋炎を除外。ループス頬部皮疹(頬部円板状皮疹は含まない)、水疱性ループス、SLEに伴う中毒性表皮壊死症、斑状丘疹状ループス皮疹、光線過敏ループス皮疹。あるいは、亜急性皮膚ループス(瘢痕を残さずに治る非硬化性の乾癬状あるいは標的状皮疹。炎症後の色素沈着異常や毛細血管拡張症を伴うことはある。)
2. 慢性皮膚ループス古典的円板状皮疹:限局(頸部より上)あるいは全身(頸部ならびに頸部以下)、過形成(疣贅状)ループス、ループス脂肪織炎(深在性ループス)、粘膜ループス、慢性ループスエリテマトーデス、凍瘡状ループス、円板状ループスと扁平苔癬の重複。
3. 口腔潰瘍
4. 非瘢痕性脱毛
5. 2箇所以上の滑膜炎
6. 漿膜炎
7. 腎症: 尿蛋白≧500mg/日または赤血球円柱。
8. 神経症状
9. 溶血性貧血
10. 白血球減少<4000/μL、リンパ球減少<1000/μL
11. 血小板減少<10万/μL

免疫6項目

1. 抗核抗体 
2. 抗dsDNA抗体 
3. 抗Sm抗体 
4. 抗リン脂質抗体 ループスアンチコアグラント陽性、迅速血漿レアギンテスト(RPRテスト)偽陽性
5. 低補体 
6. 溶血性貧血がなく直接クームス陽性

臨床11項目と免疫6項目からそれぞれ1項目以上、合計4項目でSLEと分類する
腎生検でSLEに合致した腎症があり抗核抗体か抗dsDNA抗体が陽性であればSLEと分類する

 

①多彩な皮膚病変をSLEの特徴して挙げられた、②自己免疫性血球減少や自己抗体の項目が細分化され1回の採血で診断が容易となった、③活動性を反映する低補体血症の項目が追加された、④ループス腎炎の規定を別に設けたなどの特徴がある。

Derivation and validation of the systemic lupus international collaborating clinics classification criteria for systemic lupus erythematosus. Petri M et al. Arthritis Rheum 64(8):2677-2686, 2012

 

治療

自分自身に対する免疫を抑えるため、免疫抑制効果のある副腎皮質ステロイド薬、免疫抑制薬が治療の主体となります。副腎皮質ステロイドは長期間大量に服用していると副作用が出現するため、患者さんの状態に合わせて必要最小限の量を必要最小限の時間投与することが原則です。患者さんの状態(臓器合併症の種類とその重症度)の評価法の一つとしてSLEDAI (SLE Disease Activity Index)が知られています。

 

重症度分類

 

SLEDAIスコア: 4点以上を対象とする。 下記の点数の合計を計算する

 

Bombardier C., Gladman DD., Urowitz MB., Carton D., Chang CH. Derivation of the SLEDAI. A disease activity index for lupus patients. The Committee on Prognosis Studies in SLE. Arthritis Rheum, 35(6): 630-640. 1992.

 

 

経過

 

臓器障害の広がりや重症度によって様々な経過をたどります。関節炎や皮膚症状のみの軽症の場合は、健康な方とほとんど変わらない生活が出来ることも珍しくありませんが、腎障害や中枢神経症状などを呈する場合では、多種類の薬剤を大量に、長期にわたって使わなければならないことがあります。

丸太町病院の総合診療科は外来・救急診療・入院加療すべてに関わっている利点を生かし、SLEの患者様の診断から治療導入、長期管理、また合併症の早期の診断や入院加療を日々行っています。

新しい治療薬

近年、皮膚エリテマトーデス(CLE)・全身性エリテマトーデス(SLE)に対してヒドロキシクロロキンが、ループス腎炎に対してミコフェノール酸モフェチルが用いることができるようになりました。詳しくは以下を参照ください。

【日本皮膚科学会】 ヒドロキシクロロキン適正使用の手引き(簡易版)( 2015.10.20 版)
【日本リウマチ学会】 皮膚エリテマトーデスおよび全身性エリテマトーデスに対するヒドロキシクロロキン使用のための簡易ガイドライン( 2015.10.20 版)

【日本リウマチ学会、 日本腎臓学会、 日本小児リウマチ学会、 日本小児腎臓病学会】ループス腎炎に対するミコフェノール酸モフェチル使用に関するステートメント

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