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自己免疫疾患におけるステロイド製剤、免疫抑制剤、γグロブリン大量静注療法、血漿交換
ステロイド
ステロイドは免疫を抑える薬剤の最も代表的なものです。効果が認められるまでの時間が短く、また用量の調節がしやすいためよく用いられますが、急にやめると離脱症候群・副腎不全を起こし発熱、血圧低下などが起こるため、自己判断で薬を調節しないことが大切です。
ステロイド製剤の種類
ステロイドの投与例
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病勢をすぐに抑える必要性があるループス腎炎、間質性肺炎、中枢神経ループスなどではステロイドパルス(メチルプレドニゾロン1000㎎×3日間)
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初期治療としてプレドニゾロンを1㎎/㎏/日 朝1回で2-4週間内服。
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その後2週間で10%づつプレドニゾロンを減量し、15㎎/日をまずは目指す。
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上記の投与法は比較的重篤な疾患に対する投与法で、病態によってはメチルプレドニゾロンを毎週60、40、30、20㎎と減量することはありうる。
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プレドニゾロンは分割投与のほうが効果はあるが副作用は増えるため、病態によって1日3回投与としたり、隔日投与を試みることもある。
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膠原病では5-15mg/日で維持されることが多いという経験則がある。
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プレドニゾロンを可能な限り少量で維持できるように1㎎/月程度で減量を試みる
ステロイドの副作用
ステロイドは副作用が多い薬剤です。ステロイドを服用する方は以下の副作用に注意する必要があります。
SLE患者において、感染症リスクはプレドニゾロンを20mg/日以上投与している群で高くなる。しかしアザチオプリン(免疫抑制剤)の投与の有無は細菌感染・ウイルス感染・日和見感染のリスク要因ではなかったという報告があります。
Ginzler E, et al. Computer analysis of factors influencing frequency of infection in systemic lupus erythematosus. Arthritis Rheum. 1978 Jan-Feb;21(1):37-44.
免疫抑制剤
免疫抑制剤をステロイドに加えることで、よりしっかりとした治療を行うことができます。ステロイドと比較して、効果はゆっくりとしか認められませんがステロイドを減らすことに役立ち、副作用の軽減が期待できます。
初期治療としてステロイド単剤で効果が不十分な場合や、20㎎/日以上のプレドニゾロンの継続が必要である場合には免疫抑制剤を加えることが多いです。
免疫抑制薬の種類
シクロドスファミドの静注は内服よりも副作用が少なく治療効果は同等と考えられています。月1回を6回行い、以後3か月ごとに合計2年間投与するNIHプロトコールが一般的です。2週間後の白血球数を3000/μL以上に保ちます。
γグロブリン大量静注療法・血漿交換
ステロイドや免疫抑制療法を大量に複数組み合わせると感染症の危険性が非常に高くなります。そのような場合に迅速な効果を期待しながら免疫力を落とさない方法として体外から免疫グロブリンを入れる、もしくは入れ替える方法が試みられることがあります。
γグロブリン大量静注療法(IVIG)
保険適応は自己免疫性血小板減少症(ITP)、川崎病、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、天疱瘡、多発性筋炎・皮膚筋炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、重症筋無力症です。
副作用として過敏症などが1%未満である程度で、数日で効果判定も可能でありますが100万円近くかかる高額な治療法です(62.5㎏の人に0.4g/㎏/日を5日間投与すると116万円)。
血漿交換
身体の中心に太い点滴を入れる必要があり、血液の一部を入れ替える侵襲性の高い治療となります。
単純血漿交換の保険適応疾患
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膠原病領域で有効性がある程度確立されているのは血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、Goodpasture症候群(抗GBM抗体関連疾患)の2つのみであり、当院ではTTPとGoodpasture症候群のように血管炎によって肺胞出血や高度腎障害が認められる場合に単純血漿交換療法を行っています。
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推定血漿量(L)=0.065×体重(kg)×(1-Ht)の1.0~1.5倍を1回の置換量(62.5㎏、Ht0.4の1.5倍として3656ml≒30単位)とし、必要なだけ繰り返します。