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全身性強皮症: Systemic sclerosis (SSc)

 

  •  強皮症には、全身性強皮症と限局性強皮症(モルフィア)があります。限局性強皮症は、皮膚が硬くなるのみで、他の内臓に影響はなく、ここで扱う全身性強皮症に含みません。

  •  全身性強皮症は、皮膚だけではなく、内臓も硬くなったり、繊維化するのが特徴です。ただ、全身性強皮症の中でも病気の進行や内臓病変を起こす頻度は個人差が大きいです。

  •  男女比は、1:12で女性が多く、30〜50歳代の女性に多くみられます。

 

全身性強皮症の分類

 

● びまん皮膚硬化型 (dcSSc)

● 全身の皮膚や臓器の線維化・硬化

● 肺線維症が多い

● 抗トポイソメラーゼI抗体(抗Scl70抗体)が関連する

● 限局皮膚硬化型(lcSSc)

● 手指や顔面に限局した硬化

● 肺高血圧が多い

● 抗セントロメア抗体が関連する

● 皮下に多数の石灰沈着(Calcinosis cutis)、レイノー現象(Raynaud phenomenon)、下部食道の拡張(Esophageal dysmotility)、手指皮膚硬化(Sclerodactyly)、毛細血管拡張症(Telangiectasia)があわせて見られる事があり、頭文字を組み合わせてCREST症候群とも呼ばれます

 

診断基準

 

厚生労働省2003年の診断基準

大基準

手指あるいは足指を超える皮膚硬化

小基準

1) 手指あるいは足指に限局する皮膚硬化

2) 手指先端の陥凹性瘢痕あるいは指腹の萎縮

3) 肺基底部の線維症(両側性)

4) 抗トポイソメラーゼ抗体(抗Scl70抗体)、抗セントロメア抗体

手指の所見は、循環障害、外傷が原因であることを除く。

上記のうち、大基準を満たす場合、あるいは小基準の1)および2)-4)の1項目を満たす場合に診断する。

 

2013年全身性強皮症の分類基準(米国/欧州リウマチ学会)

1. 両手指のMCP関節より近位の皮膚硬化(9点)

2.手指の皮膚硬化:腫れぼったい指(2点)、PIPからMCPまでの皮膚硬化(4点)   【高い得点をカウント】

3. 指尖部病変:指尖部潰瘍(2点)、指尖部陥凹瘢痕(3点) 【高い得点をカウント】

4. 毛細血管拡張症(2点)

5. 爪郭部の毛細血管拡張異常(2点)

6. 肺動脈性肺高血圧症、および/もしくは間質性肺疾患(2点)

7. レイノー現象(3点)

8. 抗セントロメア抗体、抗トポイソメラーゼI(Scl70)抗体、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体(3点)

 

手指硬化がない場合、類似する疾患(腎性全身性繊維症、全身性斑状強皮症、好酸球性筋膜炎、糖尿病性浮腫性硬化症、硬化性粘液水腫、紅痛症、ポルフィリン症、硬化性苔癬、移植片対宿主病、糖尿病性手関節症など)には適応しない。

合計9点以上で全身性硬化症と分類する。

2013 classification criteria for systemic sclerosis: an american college of rheumatology/european league against rheumatism collaborative initiative. van den Hoogen F et al. Arthritis Rheum. Nov;65(11):2737-47, 2013 / Ann Rheum Dis. Nov;72(11):1747-55, 2013

 

診断に有用な毛細血管や爪郭部の毛細血管異常を診断する際、キャピラロスコピーが必要(当院救急総合診療科外来に設置)

 

重症度分類 → 以下の5臓器の重症度分類のうち、中等症以上が一つでもあれば助成の対象

 

①皮膚 

Modified Rodnan's total skin thickness scoreを用いる

点数 皮膚硬化 

0点 な し つまんだ皮膚は厚くない

1点 軽 度 指先で小さくもつまめるが皮膚が厚い

2点 中等度 指腹で大きくしかつまめない

3点 高 度 つまむ事ができない

手指基節部、手背、前腕、上腕、大腿、下腿、足背(ここまで左右)と顔、前胸部、腹部の17箇所の合計点で評価

 

0 正 常 0点

1 軽 症 1-9点        

2 中等症 10-19点

3 重 症 20-29点

4 最重症 30点以上

 

②肺

0 正 常 間質性変化なし

1 軽 症 間質性変化あり%VC≧80%            

2 中等症 間質性変化あり%VC≧80%

3 重 症 間質性変化あり%VC≧80%

4 最重症 間質性変化あり%VC≧80%

 

③心

0 正 常 心電図正常 EF>50%      自覚症状なし

1 軽 症 治療を要しない不整脈・伝導障害 EF=45-50% NYHAⅠ度       

2 中等症 治療を要する不整脈・伝導障害 EF=40-45% NYHAⅡ度           

3 重 症 ペースメーカー適応 EF<40% NYHAⅢ度       

4 最重症 NYHAⅣ度

 

④腎

全身性強皮症では高レニン・高血圧性の強皮症腎クリーゼ(抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性と関連)を起こしうるが、ANCA関連糸球体腎炎、微小血管性溶血性貧血(破砕赤血球とADAMTS13活性低下)により急激な腎機能低下を来たす事もある。

 

0 正 常 

1 軽 症 Cr 0.9~1.2mg/dl、または、尿蛋白1+~2+          

2 中等症 Cr 1.3~2.9mg/dl、または、尿蛋白3+~4+

3 重 症 Cr 3mg/dl以上

4 最重症 血液透析が必要

 

⑤消化管

A上部消化管病変

0 正 常  

1 軽 症 食道下部蠕動低下 自覚症状なし 

2 中等症 胃食道逆隆昌

3 重 症 逆流性食道炎とそれに伴う嚥下困難

4 最重症 食道狭窄による嚥下困難

 

B下部消化管病変

0 正 常 

1 軽 症 自覚症状を伴う腸管病変

2 中等症 抗菌薬の服用が腸内細菌過剰増殖のため必要

3 重 症 吸収不良症候群を伴う偽性腸閉塞の既往

4 最重症 中心静脈栄養療法が必要

 

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