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IgG4関連疾患
概要
IgG4関連疾患とは,2001年の報告を契機として,わが国より発信された疾患概念です.ほぼ全ての臓器に生じるもので,IgG4陽性形質細胞の腫瘤形成,あるいは組織浸潤を特徴とします.
2011年には,本邦より IgG4関連疾患包括診断基準が提唱され,これまで別々のものと考えられていた下記の様な既存の疾患,あるいはその一部が IgG4関連疾患に含まれると考えられます.
症状
病変を来たす臓器が多岐に渡るため,症状も多彩です.例えば,代表的な IgG4 関連疾患である,1型自己免疫性膵炎であれば,軽度の腹痛や背部痛,体重減少,食欲不振,全身倦怠感などの非特異的な症状や,閉塞性黄疸などです.
診断
包括診断基準と臓器特異的診断基準があります.
IgG4関連疾患の診断アルゴリズム
AIP: autoimmune pancreatitis
IgG4関連疾患包括診断基準 2011
上記のうち,
1)+2)+3)を満たすものを確定診断群(definite).
1)+3)を満たすものを準確診群(probable).
1)+2)を満たすものを疑診群(possible)とする.
但し,できる限り組織診断を加えて,各臓器の悪性腫瘍(癌,悪性リンパ腫など)や類似疾患(Sjogren症候群,原発性硬化性胆管炎,Castleman病,二次性後腹膜線維症,多発血管炎性肉芽腫症,サルコイドーシス,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症など)と鑑別することが重要である.
本基準により確診できない場合にも,各臓器の診断基準により診断が可能である.
Comprehensive diagnostic criteria for IgG4-related disease (IgG4-RD), 2011. Research Program of Intractable Disease provided by the Ministry of Health, Labor, and Welfare of Japan. Nihon Naika Gakkai Zassi 2012; 101: 795-804
臓器特異的診断基準をアルゴリズムに沿って1型自己免疫性膵炎,IgG4関連 Mikulicz病,IgG4関連腎病変の診断基準を示します.また,IgG4関連硬化性胆管炎の診断基準も示します.
1型自己免疫性膵炎臨床診断基準 2011
(日本膵臓学会・厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班)
自己免疫性膵炎を示唆する限局性膵腫大を呈する例で ERP 像が得られなかった場合,EUS−FNA で膵癌が除外され,III/ IVb/V(a/b)の 1 つ以上を満たせば,疑診とする.さらにオプション所見が追加されれば準確診とする.
疑診*:わが国では極めてまれな 2 型の可能性もある.
+;かつ, / ;または
Clinical Diagnostic Criteria for Autoimmune Pancreatitis 2011 (Proposal). 膵臓 2012; 27: 17-25
自己免疫性膵炎診断基準(ICDC)
日本では稀とされる2型自己免疫性膵炎の診断基準も含まれていますが,ここでは割愛します.
1型自己免疫性膵炎診断基準(ICDC)
International Consensus Diagnostic Criteria for Autoimmune Pancreatitis: Guidelines of the International Association of Pancreatology. Pancreas 2011; 40: 352-8.
IgG4関連涙腺唾液腺炎:IgG4-Mikulicz 病
1+2または1+3で診断する.
IgG4-related diseases including Mikulicz's disease and sclerosing pancreatitis: diagnostic insights. J Rheumatol. 2010; 37(7): 1380-5
IgG4関連腎病変
IgG4関連腎症診断基準
Definite(確診):
1)+3)+4)a, b
2)+3)+4)a, b
2)+3)+5)
1)+3)+4)a+5)
Probable(準確診): 1)+4)a, b
2)+4)a, b 2)+5)
3)+4)a, b
Possible(疑診):
1)+3)
2)+3)
1)+4)a
2)+4)a
Diagnostic Guideline for IgG4-related kidney disease 日腎会誌 2011; 53(8): 1062-1073
IgG4関連硬化性胆管炎臨床診断基準 2012
ただし,胆管癌や膵癌などの悪性疾患,原発性硬化性胆管炎や原因が明らかな二次性硬化性胆管炎を除外することが必要である.診断基準を満たさないが,臨床的に IgG4 関連硬化性胆管炎が否定できない場合,安易にステロイド治療を行わずに専門施設に紹介することが重要である.
Clinical diagnostic criteria of IgG4-related sclerosing cholangitis 2012. JJBA 2012; 26: 59-63