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アナフィラキシー

 アナフィラキシーとは、発症後、極めて短い時間のうちに全身性にアレルギー症状が出る反応です。

 アナフィラキシーの症状はさまざまです。もっとも多いのはじんましん、かゆみですが、呼吸困難、目のかゆみやむくみ、くちびるの腫れ、腹痛、血圧低下なども見られます。これらの症状が複数の臓器にわたり全身性に急速にあらわれるのが、アナフィラキシーの特徴です。特に、急激な血圧低下で意識を失うなどの「ショック症状」も1割程みられ、これはとても危険な状態です。

 アナフィラキシーの原因には医薬品も多いですが、食事によるものも多く知られており、ここでは主に食事アレルギーについて説明します。

なお、ハチ刺傷では発症から急激に悪くなることが知られており、アナフィラキシーショックによる死亡者の1/3はハチ刺傷によるものです。特にハチに二度目に刺され症状が出現した時には非常に危険な状態ですので救急車ですぐに来院してください。


即時型食物アレルギー

即時型食物アレルギーの原因には鶏卵・牛乳・小麦が3大原因です。

成人発症例では小麦、ソバ、魚介類が多い原因です。

即時型食物アレルギーの確定診断は経口誘発試験で行いますが、成人では病歴から推測可能なことが多いため施行することは多くありません。
血液検査(特異性IgE抗体)は補助診断として用います。

  • MAST33アレルゲンは吸入抗原も食餌抗原も含め幅広いスクリーニングに優れています。

  • データの蓄積があり信頼性が高いのはImmunoCAPによるIgE検査であり、特に小児では卵白・牛乳・小麦・ω5-グリニジン(小麦のアレルゲンコンポーネント)・Ara h2(ピーナッツのアレルゲンコンポーネント)においてはプロバビリィティ・カーブを利用する事で検査後確率が簡単に推測できます(J Allergy Clin Immunol. 2007 May;119(5):1272-4/Allergy. 2015 Jan;70(1):90-8.)。最近ではアレルゲンコンポーネントに Gly m 4(大豆由来)やHev b 6.02(ラテックス由来)も追加されました。当院では疑われる食餌抗原が複数ある場合にはImmunoCAPによる検査を薦めています。

  • ImmunoCAPに項目がない場合はアラスタット3Gによる検査も施行可能です。

  • 好塩基球ヒスタミン遊離試験(HRT)はIgE抗体よりも特異性に優れるため安全な確認検査として用いることもあります。またオバルブミンはHRTでのみ検査が可能です。

間違えやすい疾患に小麦アレルギーと似ている経口ダニアナフィラキシーがあり、開封後常温保存されているお好み焼き・ホットケーキミックスの使用歴には注意が必要です(Allergol Int. 2014 Mar;63(1):51-6.)。また魚介類摂取の場合はヒスタミン食中毒とアニサキス症は念頭にいれるべきです。


食物依存性運動誘発アナフィラキシー

小麦とエビなどが原因として多いですが、特に成人では小麦が原因であることがほとんどです。

  • 食後運動開始までは60分未満が85%、30分未満が75%ですが(アレルギー. 2007;56(5):451-6)、原因食品摂取4時間後までは運動を控えるべきとされます。

  • 様々な誘発因子が関わるため、原因食品を食べても起こらない場合もあり、また運動だけではなく解熱鎮痛薬や飲酒などが関わり発症するため診断が難しく30年診断が付かなかった症例もあります。

  • 診断には特異的IgE抗体:ω5グリニジンが有用ですが(Allergy. 2008 Feb;63(2):233-6.)、診断に悩む場合はやはり負荷試験が必要となります。


小麦依存性運動誘発アナフィラキシー診断のための負荷試験

・試験当日、小麦除去食とする。試験前6時間は絶食とします。
・負荷試験では静脈ルートを確保しヘパリン生食にてロックする。救急カートの準備をしておく。

【1日目 小麦負荷】
乾燥うどん 120 g で作った素うどんを準備し、15分以内で摂取
安静にて15分毎にバイタル測定。2時間後までは厳密に監視。

【2日目 運動負荷】
エルゴメータによる運動負荷試験:心臓内科に依頼
(Bruce 法、5〜6段階、15 〜 20 分、患者に合わせて適宜増減)

【3日目 小麦+運動負荷】
うどん食後 15 分を目標に運動負荷を行う

【4日目 アスピリン負荷】
アスピリン末 500 mg を内服

【5日目 アスピリン+小麦負荷】
アスピリン服用後 30 分後にうどん摂取

【6日目 アスピリン+小麦+運動負荷】
アスピリン服用後 30 分後にうどん摂取。食後 15 分に運動負荷

 

臨床皮膚科. 2008;62(5):64-67 より改変

 

口腔アレルギー症候群

  • 即時型食物アレルギーの特殊型で、食物摂取時に口腔・咽頭粘膜の過敏症状をきたすものをいい、ショックをきたすこともあります。

  • 天然ゴム製ラテックスにもアレルギーを来たすラテックスーフルーツ症候群や関連する花粉と交差反応を示す症例が知られています。

ラテックスアレルギー     と  バナナ・アボカド・クリ
ハンノキ・シラカンバ花粉症 と   バラ科(リンゴ・モモ・サクランボ)
イネ科・ブタクサ花粉症    と  ウリ科(スイカ・メロン)
ヨモギ花粉症           と  セリ科(セロリ・ニンジン)

  • 診断にはプリックテストが有用ですが、まずはより簡便な食物特異的IgE抗体を測定します。


エピペン
自分で治療を開始することができるエピペンも当院では処方しています。
食事アレルギーで原因を避ける事ができる場合はまだ良いのですが、特にハチによるアナフィラキシーや原因不明のアナフィラキシーでは原因を回避しきれないため、エピペンが有用な可能性が高くなります。

 

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