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悪性関節リウマチ

 悪性関節リウマチは、「既存の関節リウマチに、血管炎をはじめとする関節外症状を認め、難治性もしくは重篤な臨床病態を伴う場合」と定義される日本独自の疾患概念。60歳代に多い。欧米では重症な関節外症状を伴う関節リウマチは「血管炎を伴う関節リウマチ」という定義でなされることが多いが、悪性関節リウマチではそれに加え非血管炎型として間質性肺炎も重要しているという違いがある。

 

悪性関節リウマチの診断基準(1998年厚生省難治性血管炎調査斑)

既存の関節リウマチに血管炎をはじめとする関節外症状を認め、難治性もしくは重篤な臨床病態を伴う場合、これを悪性関節リウマチと定義し、以下の基準により診断する


A.臨床症状、検査所見

1.多発性神経炎
2.皮膚潰瘍または梗塞または指趾壊疽
3.皮下結節
4.上強膜炎または虹彩炎
5.滲出性胸膜炎または心嚢炎
6.心筋炎
7.間質性肺炎または肺線維症
8.臓器梗塞(腸管、心筋、肺など)
9.RF高値 2回以上の検査でRAHAまたはRAPAが2560倍以上(RF定量では960 IU/mL以上)
10.血清低補体価(C3,C4またはCH50)または血中免疫複合体(C1q)陽性

B.組織所見

皮膚、筋、神経、その他の臓器の生検により、小ないし中動脈に壊死性血管炎、肉芽腫性血管炎ないしは閉塞性内膜炎を認めること

 

ACR/EULARによる関節リウマチの分類基準 2010年を満たし,上記に掲げる項目の中で,
(1) 1.臨床症状(1)~(10)のうち3項目以上満たすもの,又は
(2) 1.臨床症状(1)~(10)の項目の1項目以上と2.組織所見の項目があるもの,
を悪性関節リウマチ(MRA)と診断する。

 

治療
それまでの関節リウマチ自体の治療の継続と病型や重症度によって治療が追加されます。関節炎に対しては生物学的製剤なども使われます。血管炎に対しては炎症を抑える作用のある副腎皮質ステロイド薬や、免疫を抑制する免疫抑制薬が使われます。


悪性関節リウマチの重症度分類(3度以上を公費対象とする)
 

1度 : 免疫抑制療法(ステロイド薬、免疫抑制薬の投与)なしに1年以上活動性の血管炎症状(皮下結節や皮下出血などを除く)を認めない寛解状態にあり、血管炎症状による不可逆的な臓器障害を伴わない患者


2度 : 血管炎症状(皮膚梗塞・潰瘍、上強膜炎、胸膜炎、間質性肺炎など)に対し免疫抑制療法を必要とし、定期的な外来通院を要する患者、若しくは血管炎症状による軽度の不可逆的な臓器障害(抹消神経炎による知覚障害、症状を伴わない肺腺維症など)を伴っているが、社会での日常生活に支障のない患者
 

3度 :  活動性の血管炎症状(皮膚梗塞・潰瘍、上強膜炎、胸膜炎、心外膜炎、間質性肺炎、末梢神経炎など)が出没するために免疫抑制療法を必要とし、しばしば入院を要する患者、若しくは血管炎症状によって以下に示す非可逆的臓器障害のいずれかを伴い社会での日常生活に支障がある患者 

<3度に相当する不可逆的臓器障害>
 1 下気道の障害により軽度の呼吸不全を認め、PaO2が60-70Torr
 2 NYHA2度の心不全徴候を認め、心電図上陳旧性心筋梗塞、心房細動(粗動)、期外収縮又はST低下(0.2mV以上)の1つ以上を認める。
 3 血清クレアチニン値が2.5-4.9mg/dlの腎不全
 4 両眼の視力の和が0.09~0.2の視力障害
 5 拇指含む2関節以上の指等切断
 6 末梢神経障害による1肢の機能障害(筋力3)


4度 : 活動性の血管炎症状(発熱、皮膚梗塞・潰瘍、上強膜炎、胸膜炎、心外膜炎、間質性肺炎、抹消神経炎など)のために、3か月以上の入院を強いられている患者、若しくは血管炎症状によって以下に示す不可逆的臓器障害(1~6)を伴い家庭での日常生活に支障がある患者 

<4度に相当する不可逆的臓器障害>
 1 下気道の障害により中等度の呼吸不全を認め、PaO2が50-59Torr
 2 NYHA3度の心不全徴候を認め、X線上CTR60%以上、心電図上陳旧性心筋梗塞、脚ブロック、2度以上の房室ブロック、心房細動(粗動)、人工ペースメーカーの装着のいずれかを認める。
 3 血清クレアチニン値が5.0~7.9mg/dlの腎不全
 4 両眼の視力の和が0.02~0.08の視力障害
 5 1肢以上の手・足関節より中枢側の切断
 6 末梢神経障害による2肢の機能障害(筋力3)

 

5度 : 血管炎症状による重要臓器の不可逆的臓器障害(1~6)を伴い、家庭内の日常生活に著しい支障があり、常時入院治療、又は絶えざる介護を要するもの

<5度に相当する不可逆的臓器障害>
 1 下気道の障害により高度の呼吸不全を認め、PaO2が50Torr未満
 2 NYHA4度の心不全徴候を認め、X線上CTR60%以上、心電図上陳旧性心筋梗塞、脚  ブロック、2度以上の房室ブロック、心房細動(粗動)、人工ペースメーカーの装着のいず  れか2つ以上を認める。
 3 血清クレアチニン値が8.0mg/dl以上の腎不全
 4 両眼の視力の和が0.01以下の視力障害
 5 2肢以上の手・足関節より中枢側の切断
 6 末梢神経障害による3肢の機能障害(筋力3)、又は1肢以上の筋力全廃(筋力2以下)

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