top of page
U

小児で気を付けるべき中毒(one pill can kill)

380万件のデータから解析すると以下のものはかなりハイリスク(重度な症状/暴露された人から危険度を算出)です。

筋弛緩薬が最も危険というデータですが、コカイン、LSD、PCPなどが含まれているのがさすがアメリカのデータです。ガラガラヘビも非常に危険ですね。

意外なのはパラコートは自殺使用としなければ呑み込まないのか、66例で一人も亡くなっておらず(自殺目的で飲まれた時は普通救えないと思う)、降圧薬やカルバマゼピン、アモキサピン(TCA)といった薬剤のほうが非常に危険な薬として考えられています。

Pediatrics. 1992 Jun;89(6 Pt 1):999-1006.

体重10㎏ぐらいの子供が1-2錠/カプセル、スプーン1-2杯で死んでしまう薬をToddler killerなんて呼ぶと昔聞きましたが、PubMedでは“one pill can kill”で検索すると引っかかってきます。

三環系抗うつ薬、カルシウム拮抗薬、抗不整脈薬、抗精神病薬、オピオイドは日本の規格では1錠で致死的となることは稀でしょうが、危険な薬剤として有名な薬剤です。ただし抗精神病薬でも限定された医師しか処方しないクロザピンは1錠(100mg)で致死的となるようです。β拮抗薬やSU剤もone pill can killとして有名ですが、最小致死量が不詳で日本の1錠で致死的かもしれません。

意外な事に日本の規格の1錠で明らかに危険なのはテオフィリン、ヒドロキシクロロキンです。

あとは処方頻度が高いが危険性が広くは認識されていなそうなものにAChE阻害薬があります(Clin Toxicol (Phila). 2014 Apr;52(4):291-4.)。

コルヒチンは0.5mg/kgで死亡率が高まりますがone pillとは言えなさそうです(Clin Toxicol (Phila). 2010 Jun;48(5):407-14.)。

 なお、サリチル酸メチルは消化管症状が強いため内服薬としては用いられておらず、鎮痛外用薬(Bengay, Wintergreen Oil, Peptobismol, Tiger Balm)に含まれます。Tiger Balmは樟脳も含まれるため子供が食べると非常に危険です。

 衣料用防虫剤としてのナフタリン、樟脳は現在は安全性が高いパラジクロベンゼンやピレスロイド系に置き換わっていっています。古典的には水に入れると浮いて動きまわる樟脳、60℃のお湯で溶けるもしくは飽和食塩水にも沈むパラジクロルベンゼン、どれも当てはまらないナフタレンという鑑別法がありました。現在はインターネットですぐに調べられるのでこの鑑別方法を用いたことはありませんが、いつか役立つ知識かも知れません。

 化粧品類としてはユーカリオイルも危険で乳幼児には用いてはなりません。

“one pill can kill”ならぬ”one drink can kill”

これは私の造語なので網羅的ではないですが2つ紹介。

一つ目はエチレングリコール。甘みがあり車の不凍液を誤飲してしまう事故があります。

不凍液はLLC(ロングライフクーラント)などとも呼ばれるもので通常30(~60)%に希釈して用いますが、95%ほどがエチレングリコールの製品も販売されています。

これだと15mL/10㎏で致死的となりえるため、一口でアウトとなります。

なおアイスノンはプロピレングリコールなので安全性が高いです。

二つ目は鉄剤。乳児の中毒死は鉄剤が一番多いという報告もあります。

J Toxicol Clin Toxicol. 1993;31(3):407-13.

鉄は40-60㎎/㎏で重大な副作用、200-250㎎/㎏で致死的となる可能性と言われており、フェロミアならば40-50錠/10㎏が致死量の目安です。

そんなに飲まないと思うでしょうが、インクレミンシロップならばジュース1缶(350ml)程度ですから誤飲するのも分からなくもないです。

検査値としては鉄の血中濃度は350-1000mcg/dLで全身の毒性が出現するのが目安です。

乳酸アシドーシスの原因に鉄中毒があるというのは知っておいてよいでしょう。

Dimens Crit Care Nurs. 2007 Mar-Apr;26(2):43-8

閲覧数:1,650回0件のコメント
bottom of page