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上肢が頚髄支配ならば、上肢を動かす大胸筋の痛みも頚髄由来でよい

三重大学「”心臓痛”ではない胸痛~コモンだが意外に知らない?胸壁症候群~」を講演しました。初期研修医、医学部5年生、6年生が中心でした。

症例を一つだけ紹介。

高血圧の既往のある50歳男性の前胸部痛

•5.5年前から左上肢に放散する狭心痛がある。

•1か月前から頸部痛と左腕にしびれ

•10/10の程度で呼吸困難も伴う前胸部痛に対して過去に3回の心カテ、2回の負荷試験をしているが結果は陰性

正解は頸椎症による胸痛でしたが、頚髄のデルマトームでは胸痛の説明ができません。

Cervical anginaと呼ばれるこの現象は

•神経根~後根に対する直接的な圧迫による刺激が根性痛として脊髄視床路に伝達

•前根の圧迫によりその支配領域に出現する非限局性の深部痛(protopathic pain)

•神経根の圧迫に関係なく,椎間板の変性による discogenic pain や椎間関節・前後縦靭帯などから生じる放散痛

•Myelopathic pain: 分節性の痛みに対する抑制機構の機能低下,下行性の疼痛抑制機構の機能低下

•交感神経系を介する機序

といった機序が考えられています。

それぞれの理論にはそれなりの根拠があって考えられている理論だそうですが、私の中で最も分かりやすいと思う説明は、下の図で大胸筋を支配している胸筋神経は頚髄由来であるということです。(内側胸筋神経(medial pectoral nerve)はC8〜Th1前枝、外側胸筋神経(lateral pectoral nerve)はC5〜C7前枝から出る神経。)

なお、頚髄病変で背部に痛みがでるのもよくあります。

Spine (Phila Pa 1976). 2006 Aug 1;31(17):E568-73.

これは 僧帽筋は副神経以外にC3-4が支配していること、

棘上、棘下筋を支配する肩甲上神経や、肩甲下筋を支配する肩甲下神経はC5ー6支配であり、

大・小菱形筋を支配している肩甲背神経はC4-6支配であることによると考えればわかりやすいです。

上腕デルマトームは頚髄支配なのだから、上腕を動かす筋肉は頚髄支配。だから大胸筋や肩甲骨部の痛みは頚髄由来でもよいと考えればよい思います。

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