Twelve or 30 Months of Dual Antiplatelet Therapy after Drug-Eluting Stents
NEJM 2014; 371(23): 2155-66
【背景】
ステント留置患者には6~12カ月間のDAPTの実施が推奨されているが,幾つか
の観察研究により,DES留置患者に1年を超えてDAPTを継続すると,心筋梗塞リ
スクが減少することが示されていた.一方で,長期のDAPTは心筋梗塞リスクを
低減しないだけでなく出血リスクを高めるという報告もあった.ただしこれま
でのところ,1年を超えて治療を継続することの利益とリスクについて検討し
た、適切な検出力を有するRCTはなかった.
そこで著者らは,1年超のDAPTの有効性と安全性を検討する国際的な多施設
RCTを行った.この試験は,米食品医薬品局(FDA)からのステント製造会社へ
の要請に応えるものでもある.
【方法】
薬剤溶出ステント(DES)留置術を受けた患者を登録した.12ヶ月間,抗血小
板薬2剤併用療法(DAPT)を継続した後に18ヶ月間,チエノピリジン系薬剤(ク
ロピドグレルまたはプラスグレル)を内服する群と薬効のないプラセボを内服
する群にランダムに割り付けを行った.なお全ての患者においてアスピリンは
継続とし30ヶ月終了後,全ての患者がアスピリンのみを使用している状態でさ
らに3カ月間追跡した.主要な評価項目は12ヶ月〜30ヶ月のステント血栓症と
主要な心血管イベント,脳血管イベントとした(死亡,心筋梗塞,脳梗塞の複
合).
また中等度〜重度の出血についても評価を行った.
【結果】
2009年8月13日から2011年7月1日に11カ国の452施設で9961名の患者がチエノ
ピリジン系薬剤もしくはプラセボに割り付けられた.
介入群では,対照群に比べてステント血栓症が有意に少なかった.累積罹患率
はそれぞれ0.4%,1.4%でハザード比は0.29(95%信頼区間0.17-
0.48,P<0.001).主要な心・脳血管有害イベントも4.3%,5.9%でハザード
比0.71(0.59-0.85,P<0.001)と介入群で有意に少なかった。
心筋梗塞の累積罹患率は介入群で有意に少なく(2.1%,4.1%,ハザード比
0.47,0.37-0.61,P<0.001),全死因死亡は対照群の方が少ない傾向が見ら
れた(2.0%,1.5%,ハザード比1.36,1.00-1.85,P=0.05).心疾患死亡の
発生率(0.9%,1.0%,P=0.98)と,血管疾患死亡の発生率(どちらも
0.1%,P=0.98),脳卒中罹患率(0.8%,0.9%,P=0.32)に差は見られなか
った.
中等症から重症の出血の発生率は介入群で有意に高かった(2.5%,1.6%,ハ
ザード比1.61,1.21-2.16,P=0.001)が,重症出血リスクには有意差は見ら
れず(0.81%,0.56%,P=0.15),致死的出血(BARCタイプ5)のリスクにも
差は認められなかった(0.15%,0.09%,P=0.38).
割り付け薬投与終了後3カ月間のデータも加えて,12~33カ月の全死因死亡率
を比較したところ,2.3%,1.8%でハザード比は1.36(P=0.04)と介入群が
有意に高くなった.
【結論】
1年を超えてDAPTを継続すると,1年後時点でアスピリンのみの投与に切り替
えた場合に比べて,ステント血栓症と主要な心・脳血管有害イベントのリスク
は下がるが,出血リスクは上昇することが示された.
Patients
18歳以上のDES(Cypher, Endeavor, TAXUS, Xience, Promus)留置されたDAPTを投与する患者.
DAPTはclopidogrel 75mg or prasugrel 10mg with aspirin 76mg-162mgでmainteinance.
mainteinanceを12ヶ月行う.
stent径は2.25mm-4.0mm.
Intervention
上記のDAPTをstent留置12ヶ月後も継続.
Control
aspirin+placebo.
Outcomes
Primary end point's'
12-30ヶ月のステント血栓症,および心血管イベント(死亡,心筋梗塞,脳梗塞のcomposite)
Primary safety end point
modarate-severe bleeding
study design
Multicenter, international, randomized, double-blind, placebo-controlled trial
Am Heart J. 2010; 160(6): 1035-41
割付
computer generated
stratified according to the type of stent, hospital site, type of thienopyridine drug, at least one risk factor for stent thrombosis.
Characteristics
一応差はなさそう.
他の治療の検討がない.
スタチンやACE-I,DMの治療薬などの記載なし.ワーファリン投与されている人は除外.
TLR率の記載もなし.
サイズに関して.
Primary outcomeに関しては,ステント血栓症0.5%,出血2.9%で,HR=0.45, 0.75と仮定.α=0.05, β=0.15で計算.
Primary safety outcomeはnoninferiority, 1.9%のイベント発生率に対してmargin 0.8%で計算.α=0.025(one-sided), β=0.20
で,大体10000人必要.
Results
Primary outcome's'は,有意差を以って減少.NNT=66程度
all cause deathsは差がなかった(2.0% vs 1.5%; p=0.05)が,12-33ヶ月では有意差を以って死亡が増加(2.3% vs 1.8%; p=0.04)
Discussionで,癌が多かったとか,外傷が多かったと記載.
出血は増加.NNH=111程度 (GUSTO moderate-severe)
BMJからDAPTのmeta-analysisで,やはり長くても1年程度という考えが主流.
BMJ 2015; 350: h1618
Resoluteなどの新しいステントも試験に入っておらず,なんとも言えないところがあるが,出血も考えるとDAPTは長くて1年というのが妥当という従来通りの考えでよいと思いました.
BMJ 2013; 347: f6530 doi: 10.1136
このメタではResolute良さそうです.
個人的には,将来,bioabsorbable DESがうまく行けば,LSTに対するDAPTが必要なくなる時代がくるのかなぁと夢見ています.