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盲目的にEdaravoneを使用してよいものか?

Effect of a novel free radical scavenger, edaravone (MCI-186), on acute brain infarction. Randomized, placebo-controlled, double-blind study at multicenters.

Edaravone Acute Infarction Study Group.

Cerebrovasc Dis. 2003;15(3):222-9.

PMID:12715790

2015年度版の脳卒中ガイドラインの勉強会を先日行った。いくつかの変更点はあるものの、Edaravoneが推奨されていることには変わりはなかった。EdaravoneはUpToDateなどをみても世界的には臨床的効果は証明されていないという扱いを受けている。先発品ならば2週間で16万円の薬価でDPCも跳ね上がることから病院経営としては良いが、患者負担が増えるだけならば使いたくない。また急性腎不全が問題となることもある。我々は適応症例をかなり絞って使用しているが、今一度もととなっている論文を読み直した。

・多施設研究 Randomised Double blind controled studyではあるが、どのように無作為化しているのかあるいは盲検されているかの記載は皆無であり、質が高い研究とは言えない。

・発症から72時間以内の虚血性脳梗塞で血栓性でも塞栓性でもよい

・JCSで0-30の症例でJCSが100-300の症例は除外

・評価は3か月時点での退院率とmodified Rankin scaleで、6、12か月後のmodified Rankin scaleも付加的に評価。

・多くの症例で意識清明にもかかわらず88.9%でグリセロールが使用されており、現在の一般的な脳卒中の治療とは若干異なるのではないかと感じた。喫煙歴や脂質異常などのBaselineの記述が乏しい。

・結果としては以下の通りで、Edaravoneのほうが3か月後のmRSは良好であった。mRS<3となるのは73%と66%でNNTは15だった(図はmRSの点数を示します)。

・ITT解析とあるが、Edaravone 125人、Placebo127人登録したがPlacebo群でそれぞれSAH既往とDICを起こした2例が除外されている。結局各群125例で解析しているが、追跡率は3か月後に91.2%、12か月後には77.6%のみ。Worst case senarioでは解析していない。

・必要なSample sizeの計算はされていない。

・Gold standardの記載はない、画像上1/3ぐらいでMRI陰性でFollowしたのかどうかも不明。

・発症時のmRSの記載がないので、そもそものベースラインが異なることを隠しているのではないかと勘ぐってしまう。

・発症から24時間以内では予後が特によい、とされているが、発症から24時間超えて使用した症例を計算してみると予後がむしろ不良となる。

・副作用の評価が記載されていないが、発症から24時間を超えてから投与すると予後不良となることからは有害な可能性すら否定できていない。

・製薬会社からプラセボ薬の提供を受けている。詳細な資金提供は記載がない。

 結局、当時としては良い論文だったかも知れないが、近年のDB-RCTの質評価で考えると、患者背景不詳で、診断はどのようにされたかわからない脳梗塞患者に対して、厳格ではない無作為化と盲検化で、製薬会社の影響を受けている研究で、とりあえず症例を集めて、差があるようなデータだけ開示したのではないかと海外から評価されている理由がわかりました。厳格な基準で新たに大規模な臨床研究を行う必要があると考えられた。

ほかのRCTもさっと目を通しても、Edaravoneを積極的に使用すべき良質な報告はない。

抗血小板効果のあるOzagrelとの比較で非劣性を示した報告もあるが、そもそも期待される効能が違う薬剤であり、また抗血小板療法の第1選択であるアスピリン±クロピドグレルといった第1選択の治療法との比較でもないためあまり参考にならない。 Cerebrovasc Dis. 2009;27(5):485-92.

廃用性の筋萎縮を抑制したという報告もあるが、Open labelであること、また臨床的意義のある歩行障害については両群差異なしであることから、積極的に使用する根拠とはしがたい。 Drugs R D. 2010;10(3):155-63.

フリーラジカルが最も関与するであろうtPA症例ではどうかというと、Edaravoneのほうが24時間以内に著明な改善を認めた症例が多い(80% vs 46%)が、これは1時間以内の再開通率が高いことに起因し(57% vs 12%)、フリーラジカルのスカベンジャーであるEdaravoneの効果かどうかは疑わしい。 J Neurol Sci. 2012 Feb 15;313(1-2):132-6.

ということで、ガイドラインを鵜呑みにせず、今後も適応を絞って使用していきたいと考えた。

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