top of page
Y

エンパグリフロジンは心血管系イベントの死亡を減らす

Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes

NEJM September 17, 2015, online first

「2型糖尿病におけるエンパグリフロジンの心血管予後と死亡率」

背景:

心血管リスクの高い2型糖尿病患者での心血管疾患の罹患率および死亡率において、SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンの標準治療への上乗せ効果は知られていない。

方法:

患者は1日1回のエンパグリフロジンの10mg、25mgまたはプラセボに無作為に割り付けられた。主要複合評価項目は、エンパグリフロジン群対プラセボ群におけるプールされた解析としての心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中とした。二次複合評価項目は、主要評価項目に不安定狭心症による入院を追加したものとした。

結果:

計7020例の患者が治療を受けた(観察期間中央値3.1年)。主要評価項目はエンパグリフロジン群で4687例中490例(10.5%)、プラセボ群で2333例中282例(12.1%)であった(HR 0.86; 95.02%信頼区, 0.74-0.99; p=0.04)。心筋梗塞や脳卒中の発生率は両群間で有意差はみられなかったが、エンパグリフロジン群で、心血管死亡率(3.7% vs 5.9%; 38%の相対リスク減少),心不全による入院(2.7% vs 4.1%; 35%の相対リスク減少),全死亡率(5.7% vs 8.3%; 32%の相対リスク減少)は有意に低かった。二次評価項目に関しては両群間で有意差はみられなかった(p=0.08)。エンパグリフロジンを投与された患者において、生殖器感染の発生率が増加したが,他の有害事象について有意差はみられなかった、

結論:

標準治療に試験薬を追加する設定において、エンパグリフロジンを投与された心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者は、プラセボ群と比較して、主要複合心血管評価項目と全死亡率が低かった。

NEJMで出てきて,話題になっていた論文.読まなきゃしょうがない論文です.

Patient:

18歳以上の2型糖尿病患者,BMI≦45,eGFR≧30,糖尿病薬内服していない患者ではHbA1c 7.0〜9.0%,内服している患者ではHbA1c 7.0〜10.0%.

exclusionはappendixに記載されているが,気になるところでは,治療しても空腹時血糖が240mg/dl以上でコントロールつかない人は除外.

I/C:

エンパグリフロジン 10mg, 25mgとplaceboの3群

Outcomes:

Primary outcomeは,心血管イベントによる死亡,nonfatal MI, nonfatal strokeのcomposite

Secondary outcomeは,Primary outcome + 不安定狭心症による入院

これらのnon-inferiorityをまず検討し(HR marginは1.3),非劣性が示されれば,優位性を調べる.これらを,placebo vs 投与群(10mgと25mgの両方合わせて)

割り付け:computer generatedで1:1:1,層別化はHbA1c 8.5%,BMI 30, eGFR は3群,あとは地域.

目隠し:placeboで患者や投与している医者は目隠しされているだろう.protocolには記載あり.

評価はmodified ITT

但し7000人以上の患者で8例のみの脱落.

それぞれの群の治療は同じであった.

appendixにはDM薬,降圧薬,高脂血症薬,抗血栓療法などの詳細が記載されていて,概ね同じ.

サイズについて.

細かいことは本文には書いていないが,interrim解析の分を考慮して,noninferiorityの片側検定に対してα=0.0249, β=0.1で691のイベントが必要.

protocolには21.5% のRRRを見込んで,7000例

Characteristics

appendixにはきっちり細かいことまで書いてある.差はなさそう

DMの罹病期間は比較的長い.1年以上が97%以上,5年以上が80%以上.

結果

Primary outcomeは非劣性で,かつ有意に優位性も示されている.

HR 0.86 (0.74-0.99)

Secondary outcomeは非劣性は示されたものの,優位性は示されず.

にも関わらず,全死亡が減少し(HR 0.68: 0.57-0.82),心血管系イベントの死亡も減少した(HR 0.62: 0.49-077)

心不全入院も減少している.(HR 0.65: 0.50-0.85)

subgroup analysisでは,アジア人,HbA1c<8.5%,BMI<30,eGFR>60などでより効果が高い傾向があった.

HbA1cは一旦下がるものの戻って来ている.

気にされたUTIは意外と増えず,genital infectionは有意に増加した.genital infectionがどのようなものかは読んだ範囲ではわからず.

ちなみに,study entry後の新規導入薬の差は下記のようなもの.

どちらかと言えば,肝心な薬として,血糖降下薬はもちろん,ACE-I,β-blocker,CCB, Statin,ASAなどの導入患者の割合がplacebo群の方で高い

読んでみて.

DPP-4がいまいちな流れの中で,メトフォルミンの次に追加する薬としての地位を狙っている印象

introductionにも”there is concern that intensive glucose lowering or the use of spe- cific glucose-lowering drugs may be associated with adverse cardiovascular outcomes.”

と書いてあり,この引用文献では,アクトスに次いで,DPP-4が心不全の発生を増やしたされている.placeboと比較したわけのわからないstudyもあったが,やはり,ターゲットはDPP-4の地位

Primary outcomeのNNTは62.5とこの領域の薬剤としてはよい.

全死亡のNNTも38くらい.マジで?????

エンパグリフロジンには動脈の硬さや心機能,心臓の酸素要求量,心臓や腎臓,アルブミン尿の低下などの様々な効果があるためこのような結果になったと考察されている.なんかACE-Iやstatinみたいな方向に持って行こうという雰囲気を感じる.

正直,文句のつけようがないほどきっちりstudyされている.

また,subgroup analysisでは,アジア人,HbA1c<8.5%,BMI<30,eGFR>60などでより効果が高い傾向があり,腎機能は少し違うが,その他はどちらかと言えば普段,我々が診ている患者群に近い.

値段は10mgで205.5円/日.25mg製剤を投与する根拠はないのでこれでいい.

値段は高いが,DPP-4がそもそも何も予防しないということを考えれば,同様のRCTがいくつか出てこれば投与しない理由がなくなってくる

閲覧数:144回0件のコメント
bottom of page