当院米本先生の記事が掲載されました。
SLXLM 総合診療科医が把握しておくべきHIV感染診療(つまりは診断)について記載しています。以下要約です。
まず提示したのは脂漏性皮膚炎の40歳代男性+帯状疱疹。
★HIV感染症を考えるべき時
HIV感染症考えて!!という症例です。日常診療で見落とすと本人にとっても周囲の人にとっても不幸なことになってしまします。 ① 細胞性免疫不全を示唆する口腔カンジダ、帯状疱疹、脂漏性皮膚炎。②感染経路が共通するウィルス肝炎、梅毒などのSTD、③ 伝染性単核球症様症状(急性HIV感染症)の3つがHIV感染症を想起する上で大切と思います。
HIV感染の有病率は性感染症(4.1%)、伝染性単核球症様疾患(3.9%)、原因不明の白血球減少/血小板減少(3.2%)、帯状疱疹(2.9%)、脂漏性皮膚炎(2.1%)は特に高く、子宮頚癌(0.4%)、B型肝炎・C型肝炎(0.4%)、悪性リンパ腫(0.3%)はさほどではありません。
★HIV感染リスクの聴取の仕方
HIV感染のリスクを確認する場合には、「HIV感染で同様な症状がでることがあるために聞いているのである」、ということを明確に伝えることで相手に過度の不快感を与えないように配慮します。当然プライバシーに配慮した環境が必要なことは言うまでもありません。 MSMはHIV感染症のリスクが96倍高いという報告もあり最大のリスク要因です。海外・外国人との性的接触も確認しておきます。一方、日本人においてHIV感染者/AIDS患者の95%は男性であり、女性の場合はHIV感染症の可能性はかなり低いことが分かります。 なお、静注薬物使用も確認すべきですが、静注薬物使用によるHIV感染は日本では年間1-5件と多くはありません。
★HIV検査について HIV抗原抗体検査(第4世代抗体検査)ではWindow periodは2週間程度です。それまでは2か月ほどは診断できないこともあったのでかなり短縮されています。しかし偽陽性率が0.3%ほどあるために抗体検査はあくまでスクリーニングであり、ウエスタンブロット(WB)法ならびに拡散増幅検査法を行う必要があります。WB法の特異度は非常に高いですが陽性化に数週間かかることからWindow periodが11日間と短いPCR法も併用するわけです。
★最後に
HIV感染症の治療は進歩しており、適切な治療を行えば生命予後は悪くなく、社会制度の利用で医療費の自己負担も軽減できます。日常生活で他人に感染させることはありませんし、コンドームの使用でパートナーへの感染を予防することもできます。
抗HIV療法は専門的な知識や判断を必要としますが、我々総合診療科医もHIV感染症に対する最低限の知識は知っておかなければなりません。