前日の状況はFacebookで報告しましたが、本日は21世紀適々斎塾でした。
(開業医の、開業医による、全ての医師・医学生のための医学塾。 病歴聴取や身体診察に重点をおいた生涯教育と医学生教育を行う勉強会です。)
私の担当した症候論について5症例をあげてみんなでディスカッションしました。盛り上がり過ぎて最後は解説の時間が少なくなってしまいました。もうちょっとディスカッションタイムをとればよかったと反省です。
さて、内容の一部をシェアします。
まずは動悸の病歴の取り方について。不整脈、身体疾患に伴う洞性頻脈、心因性の3つに大別する。身体疾患に伴う洞性頻脈に関しては労作・起立・食事との関連を聞く。
急性下痢は消化管出血、トキシックショック症候群・アナフィラキシーショック、甲状腺機能亢進症・副腎不全を除外しよう。3日前に何を食べたかなど思い出せる人のほうが少ない。急性胃腸炎の病歴は毒素性、小腸型、大腸型に分類してピンポイントで食事歴を聴取せよ!
ショックは頸静脈と皮膚所見で3/4は分類診断がつく。毛細血管再充満時間延長やMottlingはショックの早期徴候としてだけではなく、治療効果判定として非常に重要。
浮腫は心臓・腎臓・肝臓・甲状腺・薬剤、つまり心・腎・肝・甲・薬の5つを考えましょう。中には栄養素枯渇(VitB1)だけではなく、突然の栄養過多(Refeeding edema)でも浮腫は起こりうる。
続いて岩田健太郎先生のお話です。
スライドを用いない講演スタイルです。スライド講演とは異なり講演者のスピーチ能力が顕在化してしまうので、まだ私にはできない高度な技術です。それにしても講演が上手です。聞き手を引付け、所々で笑いを取り(これが秀逸)、インタラクティブでもある。辿り着けない境地を見ました。
内容は聞き入ってしまってメモってなかったので、ごく一部だけ。
1950年の医学知識が倍になるまでには50年かかった。それが2020年には医学知識が倍になるには73日と予測されているそうです。勉強の仕方の変換点が来ているということでしょうか。勉強を手段としてしまうとつらい。勉強を目的とすること=内的動機づけで勉強していくとよい。これは行動経済学でよく言われることですが、やっぱり大切なことです。楽しいことは丸太町病院研修の基本理念ですし、適々斎塾21でも同じです。そして情報詰め込み勉強ではなく、情報検索能力のほうがむしろ大事となってきている。
問題が認知されていないために、“問題がない”と発言する状況がいかに多いか。形式だけ人間は、中身が整っていなくても平気で“問題ない”と言ってしまう。具体例は色々な問題で割愛しますが、内省させる言葉でした。質問をすることの大切さもかなり納得しました。自分の子供教育、研修医教育をさらに良いものにするヒントがたくさんありました。
エピソード記憶は学びではなく、思い出なだけ。一人の患者の経験ではなく、一般化できる情報・概念を抽出し、将来の患者さんに当てはめることができるようにして、初めて学びと言える。そうですよね。確かに数字を使わせずに「中年」「急性」などで表現(Semantic qualifier)させると理解が深まることは経験します。
「人を見たら結核と思え」「熱があれば、リンパ節・皮膚・関節の3つをしっかりみろ」「旅行歴に出張歴や居住歴を含んでくれない患者さんもいる」格言を入り交ぜた素晴らしい講演でした。
最後は徳田安春先生のお話です。
Reg flagとピットフォールを症例毎に掘り下げて考えることで、単なるReg flagの羅列ではなく、実践的な知識へと深めることが出来ました。
多発性骨髄腫をその日のうちに診断するための検査は、、、この患者さんに検査すべきかどうか、、、急性大動脈症候群という概念(PAU)、、、Wellens症候群、、、(あとは朝レクチャーーでShareするので秘密にしておきますが腰痛、胸痛、頭痛の面白疾患オンパレードでした。)
症例トレーニングで大変疲れましたが、いろいろな工夫が感じ取れました。症例の提示が簡潔。メッセージが簡潔(つまりよく洗練されている)。箸休めを適切に。大変参考になることが盛り沢山の講演でした。