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透析中にSpO2が下がっても、

最近透析の臨時医として対応することがある。 透析開始後に遅れて酸素化が低下するために相談された。 脱血・除水し1時間ほどしているのに鬱血による低酸素だろうか?それならば夜寝ることができないように思うが、昨晩睡眠中に苦しくなることはなかったという。 本人の自覚症状は乏しいが、以前から透析中は酸素化が下がりO2投与することが多いという。 DWを-500gに設定しなおしたが、「透析による低酸素血症 Dialysis-induced hypoxemia.」というのは古くから知られているらしい。 小児のデータではあるが、透析中に酸素化が下がる様子がグラフで示されている。まさにこういった経過の症例だった。

Nephron. 1984;37(2):105-7.

PaO2低下は一部は透析膜による反応もあるが、A-aDO2開大は来さない。 そのため主な機序は透析液へのCO2喪失などに随伴して起こる、低換気が原因 Clin Nephrol. 1982 Sep;18(3):120-5. Am J Kidney Dis. 1985 Mar;5(3):191-8.

だからHCO3を35mEq/Lと高くした透析液で、代謝性アルカローシスとなっていたとしても、 人工呼吸器管理中であれば透析中の低酸素血症は来さない J Formos Med Assoc. 1998 Feb;97(2):90-6. Respir Med. 1998 Mar;92(3):534-40.

より正確なメカニズムとしてはCO2、HCO3-の喪失は0.21±0.01mmol/分、3.4±0.5mmol/分と少量であり、透析液の酢酸が呼吸商を0.83から0.71に低下させることが主問題であるとされている。

この報告によると、酢酸の投与により、 投与前 投与後 pH 7.41 7.48 PaCO2 40 43 mmHg HCO3- 24.8 31.3 mEq/L 分時換気量 7.7 6.6 L/分 PaO2 93 78 mmHg となる。これだけPaO2が下がれば、もともとPaO2が低めの人であれば臨床的に問題となりえますね。(先の報告と同様にPaO2は15mmHgほど下がるので、単純計算すればPaO2が普段70mmHgの人なら55mmHgとなってしまうということか) Am J Nephrol. 1985;5(5):366-71.

透析中にSpO2が多少下がっても慌てる必要はないようです。

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