βラクタム製剤アレルギーというレッテルが張られている患者さんは沢山いる。 報告によっては入院患者の17.3%がβラクタム製剤アレルギーとされ、その多く(15.6%)はペニシリン・アレルギーで1.7%がセファロスポリン・アレルギー。 これらの患者が本当にβラクタム製剤(BL)に対してアレルギー反応を示すのを調べた。 グラム陰性桿菌菌血症の成人患者における多施設・後ろ向きコホート。 複数菌種検出例は除外基準。 J Allergy Clin Immunol. 2016 Apr;137(4):1148-53. doi (アズトレオナムは非βラクタム(NBL)として定義) 72-96時間後の臨床的治療失敗(38度以上/新たに人工呼吸器/昇圧薬増量/新たにICU入室/死亡)がPrimary end point。 BLアレルギーの既往はペニシリンが75%だったが、3割でセファロスポリン、4割がNBL. アレルギーの種類は皮疹、じんま疹が多く、アナフィラキシーは1割程度。
対象となった患者は主にE.coli, klebsiella, P.aeruginosaによる原発不明の菌血症で、尿路や呼吸器感染症も多かったが、複数菌感染は除外項目のため腹腔内感染患者は少なかった。
臨床的な失敗はBLで27%とNBLの39%よりも少なかった(p=0.03) 適切な抗菌薬選択もBLでは92%だが、NBLでは75%のみ 入院期間も短い傾向にあり、死亡率には差異をがないものの、可能ならばBLを使いたいという結果であった。
アレルギー反応は2.9%で起こった。アナフィラキシー反応は0.4%のみであった。
アレルギー反応を起こした患者群を見ると、アナフィラキシー反応の既往のある場合は要注意だが、詳細不明の場合は安全である可能性が高いようだ。 もしアレルギー反応を呈してしまっても、入院日数や死亡率には影響を与えない。
重篤なグラム陰性桿菌感染症では、βラクタム製剤へのアレルギー反応の既往があったとしても、アナフィラキシーの既往でなければ、注意深くβラクタム製剤を用いるのは妥当であると考えられる。 あとは個々の症例でのリスク・ビネフィットの話となりますね。