総合診療7月号のWHAT'S YOUR DIAGNOSISに症例掲載されました。
以下ネタバレですのでご注意下さい。
若年女性の複視の症例。
眼科と脳神経外科で両側外転筋麻痺疑いとされた。
正中視では左眼が内転している(上図)。右注視時には右眼外転不良(中図)、左注視時は左眼外転不良を認める(下図)
診断的手技は以下の3つ!
① 単眼視による外転障害の消失
右(左)単眼視では、右(左)注視時の外転障害は認めない。これが診断への糸口でした。
② Cover-uncover試験
右眼を遮蔽すると左眼の内転が改善する(下図)。これにより「外転障害ではなく、過剰な内転による」ことの確認ができます。過剰な内転というのは厳密には過剰な輻輳です。
③ 最初の写真のように両眼で側方視をすると複視が誘発されます。それは、過剰な輻輳がおきてしまうからです。その時には、 写真ではきれいにとれなかったので、文章での紹介となってしまいますが 、過剰な輻輳であることを示す根拠として縮瞳が認められます。
診断名としては Convergence spasm(CS) となります。
種々の器質的疾患でも報告はありますが、若年者におこりやすい機能性の疾患という位置づけです。凸レンズを使用すると 近見時の複視改善に役立ちましたが、根本的解決にはなりませんでした。
・ 若年者の“両側眼球外転障害”ではConvergence spasm(CS)を鑑別に加える。 ・ CSでは単眼視により“外転障害”は消失する. ・ 側方注視時に“外転障害”は増悪し、縮瞳が確認されれば診断的所見と考えられる. ・ 近見時の複視には老眼鏡が有用だが,治癒のためにはストレス・コーピングがより重要である.