手指関節腫脹・疼痛を主訴に受診された女性。
関節リウマチを疑う所見だが、RF、CCPは陰性。
Seronegative RAかと思ったが、手関節屈側、上肢、腋窩に皮膚色~やや茶褐色の小丘疹が集簇している。これは関節所見が出現した1年半ほど前から存在している。
皮疹はこんな感じですが、もっと皮膚色に近く、大きさは2㎜程度でもっと小さかった。
Curr Rheumatol Rep. 2015 Jun;17(6):511
Multicentric reticulohistiocytosis(MRH)か?
MRHは世界中で報告例300例ぐらいのまれな病気。
Springerplus. 2016 Feb 25;5:180.に良いReviewがあったので、メモ書きしておく。
報告は米国、ついで日本から多い。多いといっても1991-2014年の24年間で日本から9例のみなのでまれではある。
性別は女性に多い。ので関節リウマチと似ている。
臨床所見は、関節炎と皮膚所見が2大徴候。 関節炎はリウマチのように骨びらんを呈することもあれば、関節痛だけのこともある。腱鞘炎を呈する事もある。肺や心病変の報告があったり、他にもいろいろ症候はありうるが、頻度は低いので割愛。
皮膚所見は丘疹~結節病変(直径1㎜~1㎝が多い)が多く、爪周囲毛細血管拡張が続く。丘疹は掻痒感はないことが多い。日光暴露部位(顔面と手指)に病変が多いとされるが、どこに皮疹が出現してもよい。
関節所見の特徴は手指、膝、手関節、肩、肘関節に罹患が多く、関節リウマチに似てはいる。(足趾には関節リウマチより少ないようではあるが、ちゃんと評価されていない可能性はあるかも)。リウマチなどの関節炎とは異なり、関節周囲骨量減少はないことが多い。
また乾癬と間違えやすいのはDIP関節罹患しやすく、Mutilansにもなりうること。しかし骨新生は見られない。
OAと異なり骨棘形成・骨硬化も認めない。
時としてOverhanging edgesを認め痛風様にもなりうるが、対称性病変であることが多く、石灰化は認めない。
皮膚生検で多核組織球 を確認することで診断します。
検査では炎症所見が比較的乏しいようで、平均CRP 2.46mg/dl、ESR 40mm/h。
RFやCCP、抗核抗体は陰性のことが多いが陽性例の報告もある。
治療は、MTXの報告が多く7割で有効。
HCQやSASPは有用性乏しそうで薦められない。
意外なのはシクロフォスファミドが結構効果ありそうなこと。しかし使いやすい薬剤というわけではない。
最近は生物学的製剤の有用性の報告が多いようだ。
興味深いことに、MRHは骨形成活動性に関与する報告があり、骨吸収抑制効果のあるビスフォスフォネート製剤の有用性が期待されている(SAPHOでも報告あるので突拍子な話ではない)。
明らかではないものの、 21%で悪性腫瘍との関連性が疑われるため、健診レベルの悪性腫瘍スクリーニングはしておいたほうがよい。