デポ・メドロール(メチルプレドニゾロン酢酸エステル)の関節内投与で、全身にどれぐらい吸収されるの?という質問に答えられなかったので調べてみた。
関節内投与すると6-8時間後ぐらいをピークにメチルプレドニゾロンの血中濃度は上昇するが、数日でほぼ消失する。
生理的に分泌していたコルチゾールの抑制は数日間強く、7日後(168時間)まで遷延する。
Ann Rheum Dis. 1981 Dec;40(6):571-4.
ケナコルト(トリアムシノロン)のデータでも同様で血中濃度は8時間でピーク、1週間ぐらいはコルチゾール抑制。
Ann Rheum Dis. 2006 Jul;65(7):955-7.
副腎抑制の評価としてRapid ACTHを用いた研究によると、40-160㎎のメチルプレドニゾロンを関節内投与した1週間後に、ACTH負荷30分後に反応が不十分だったのは25例中3例、2週間後は1例のみであった。
Arthritis Rheum. 2005 Mar;52(3):924-8.
これらのデータからステロイド関節内投与はステロイドを1週間弱Taperingしながら全身投与するのと同じような全身副作用のようで、関節内単回投与でもアトピー性皮膚炎が改善したという報告がありますし、複数回投与するとCushing徴候が出現しうります。
Semin Arthritis Rheum. 2013 Aug;43(1):71-6
では、全身投与と比べて局所投与の意義はどのぐらいあるのか、についてですが、ヒトでの良いデータは見つからず、牛でのデータならありました。メチルプレドニゾロンの血中濃度は2日でほぼ消失しヒトでのデータと同様です。
関節液内のメチルプレドニゾロンが24時間後に残存しているのは投与量の1%に満たない量でしたが、それでも3-4か月後の関節内メチルプレドニゾロン濃度はまだ血中の最高濃度より高い値を維持していました。24時間以内の全身への分布は32%と計算されており、関節周囲の組織にメチルプレドニゾロンが沈着し徐々に放出しているかも知れないと考察されています。
J Pharmacol Exp Ther. 1986 Mar;236(3):794-802.
つまり、デポ・メドロールの関節内投与を行うと24時間で1/3が全身に分布するが、1週間程度で血中ほぼ消失するため全身の副作用は少ない(だが他の関節に対する効果はある)。残りは関節内に数か月以上に渡り局所効果を持続的に発揮することが期待される。