top of page
U

オーストラリアの禁煙戦略に日本も学びたい

総合診療科医師は医療従事者として喫煙は決してしませんし、私は大が付くほどの嫌煙家です。 オーストラリアでは喫煙者が少ないのがうれしかったです。 オーストラリアでは1991年に25.0%だった喫煙率は、2013年には13.3%になっているそうです。 http://www.health.gov.au/internet/main/publishing.nsf/Content/tobacco 現在日本での喫煙率は19.3%(下図)であり、昔よりは大分良いですがオーストラリアよりは、遅れをとっています。

http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd090000.html ではオーストラリアの規制とはどのようなものでしょうか?

私の訪れたクイーンズランド州では以下のようになっています。一言でいうと厳しいということです。  パブ、クラブ、レストラン、事務所と作業場、屋外商業飲食・飲酒場、屋外公共施設(監視員のいるビーチ、遊園地、スポーツ競技場、非住宅ビルの入口の4.0メーター以内)は禁煙である。2006年1月からアルコール飲料認可を所有するホテル、クラブやカジノでは、屋外アルコール飲料認可区域の50%まで喫煙・飲酒場所とすることができるが、この区域では、食事と飲酒、余興とケーム機を提供できない。境界には、緩衝として2.0メーターの幅、或いは2.1メーターの高さのスクリーンにより煙の流入を防止する。喫煙・飲酒場所を設定する場合、法に基づいて煙管理プログラムを要する。2006年7月以降、アルコール飲料認可区域の喫煙・飲酒場所以外では、禁煙である。

 嫌煙者なら分かると思いますが、喫煙者の風下は10M先でも不快な気分になります。京都も規制しているようで規制は緩いので、よく嫌な思いをしますが、ケアンズでは無人島で幼児連れの夫婦が喫煙していた!!以外には喫煙者には遭遇せず、規制の強さを感じました。 タバコの販売戦略が勉強になります。

まずパッケージを細かく定められており、カッコいいパッケージにはできません。 単なる毒物の説明書のようです。これは若年者の喫煙への憧れを挫くために大事な手法のようです。

http://health.gov.au/internet/main/publishing.nsf/Content/tppbook オーストラリアではコマーシャルも本気です。全国の病院・診療所の待合室に流してほしいですが、クレームもすごいでしょうね。

そして2016年5月3日にオーストラリア政府が2017年から4年間、毎年12.5%のたばこ税の増税を発表しています。 2016年;25 豪ドルは本日の為替相場で1,933円。この時点で日本よりも圧倒的に素晴らしい規制を行っていますが、 2017年:28.13豪ドル(2175円) 2018年:31.65豪ドル(2447円) 2019年:35.61豪ドル(2754円) 2020年:40.06豪ドル(3098円) となります。タバコ1箱3000円。贅沢品の極みですね。

ここまで税金を払えば受動喫煙で被害にあった非喫煙者の医療費にもまわせそうです。タバコ産業で生活されておられる人もいるので日本政府もすぐには方針転換できないのかも知れませんが、オーストラリアではその対策はどうなっているのでしょうか? 

日本において、45歳以上にかかる医療費の4%は喫煙がなければ発生しないという報告があります。

Int J Epidemiol. 2001 Jun;30(3):616-21

他にはタバコ産業経済メリットとタバコ産業社会コストの差し引きで、喫煙のために2兆8千億円の損失があるとする報告もあります。

後藤公彦. 環境経済学概論 5.経済・不経済の判定事例 p28-41, 1998, 朝倉書店

このように喫煙を減らすことで浮くであろう医療費等と、タバコ税の増収をその対策に割り当てるのでしょうか?

 なお、日本でもタバコ1箱の適正価格は1400円とする報告があります。

http://www1.sumoto.gr.jp/shinryou/kituen/kinen_supportcenter/tekiseikakaku.htm

一方、JTのホームページでは喫煙によって医療費増大するかどうかは分かっておらず、社会コストが存在するのかもわかっていないという立場を表明しています。

https://www.jti.co.jp/corporate/enterprise/tobacco/responsibilities/responsibility/cost/index.html

 有益性はなく(潰瘍性大腸炎患者を除く)、自分ばかりか周囲の人々にも有害性があることが科学的に明らかな喫煙行為に対して、社会コストが存在するかどうかをわざわざ数学的に証明にする必要はないと私は思いますが、喫煙しなければ10歳ほど長生きする訳ですから、高齢化社会を加速させるという意見も当然あります。高齢者が増えれば医療費もかかれば年金もかかるのが問題という訳です。私なら禁煙で高齢化が加速したとしたら望まれない延命治療・過剰治療を控える努力をします。経済学的にはどちらの意見が正しいかは私には分かりません。しかし、受動喫煙の問題が解決していない以上、タバコを売るというのは不特定多数に無差別攻撃をする武器を国内販売している事と同じようなものです。国家戦略として賢い道を選んで欲しいと 医師として、子供を持つ親として、 切に願います

閲覧数:148回0件のコメント
bottom of page