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抜管後のNasal high flowの有用性

Effect of Postextubation High-Flow Nasal Cannula vs Conventional Oxygen Therapy on Reintubation in Low-Risk Patients? JAMA. 2016 Apr 5;315(13):1354-61. 背景:  抜管後の再挿管が高リスクおよび低リスクである混合集団の重症患者の研究では、ネーザルハイフローは通常の酸素療法よりも抜管後の酸素化を改善することが示されている。しかしながら、再挿管についての決定的なデータは不足している。 目的:  人工呼吸器を装着している18歳以上の患者で、抜管後の再挿管のリスクが低い場合のネーザルハイフローが、通常の酸素療法よりも優れているかどうか調べること。 デザイン:  2012年9月から2014年10月の間にスペインの7つのICUで多施設共同ランダム化比較試験を実施した。登録患者は527人の成人重症患者で、計画的抜管の基準を満たした再挿管のリスクが低いものとした。低リスクの定義は、65歳未満、挿管時のAPACHE IIスコアが12点未満、BMIが30未満、適切な気道分泌物マネジメントを実施されている、適切なウィーニング、合併症が0ないし1、心不全・中等症~重症COPD・気道開存性の問題・人工呼吸器装着の遷延がないことと定義した。 介入:  患者は抜管後24時間、ネーザルハイフローあるいは通常の酸素療法にランダムに割り付けられた。フローは、10L/分から開始し、患者が不快に思うラインまでアップしていった。 アウトカム:  プライマリアウトカムは、72時間以内の再挿管とした。セカンダリアウトカムは、抜管後呼吸不全、気道感染、敗血症、多臓器不全、ICU在室日数および入院日数、ICUおよび入院死亡率、有害事象、再挿管までの時間とした。 結果:  527人(平均年齢51歳、62%が男性)のうち、264人がネーザルハイフロー、263人が通常の酸素療法を受けた。72時間以内の再挿管はネーザルハイフローで少なかった(13人[4.9%] vs 32人 [12.2%];絶対差7.2% [95%信頼区間2.5% to 12.2%]; P?=?.004)。通常の酸素療法群の再挿管率は過去の報告と同水準であった。多変量解析では、ネーザルハイフローはあらゆる原因での再挿管の低さと独立して関連していた(オッズ比0.32 [95%信頼区間0.16 to 0.66])。1人の再挿管を予防するためのハイフロー鼻腔酸素療法のNNTは14(95%信頼区間8-40)であった。  抜管後呼吸不全についてもネーザルハイフロー群で少なかった(22人/264人[8.3%] vs 38人/263人[14.4%];絶対差6.1% [95%信頼区間0.7% to 11.6%]; P?=?.03)。再挿管までの時間に両群で有意差はなかった(19時間[IQR12-28]vs 15時間[IQR9-31];絶対差-4 [95%信頼区間-54 to 46]; P?=?.66)。ICU在室日数も統計学的な差はなかった(6日[IQR, 2-8] vs 6日[IQR, 2-9];絶対差0日 [95%信頼区間?10 to 24]; P?=?.29)。鼻粘膜や皮膚に関するトラブルも含め、ネーザルハイフローによる有害事象は報告されなかった。 結論:  再挿管のリスクが低い抜管後の患者において、ネーザルハイフローは通常の酸素療法と比較して72時間以内の再挿管のリスクを減少させる。 ①-1 研究対象者(患者) inclusion criteria 2012年9月から2014年10月の間にスペインの7つのICU施設で行った。12時間以上人工呼吸器管理を行った低リスクのすべての患者

exclusion criteria 1.18歳未満。 2.妊娠中の患者。 3.蘇生していない患者。 4.気管切開患者。 5.自発呼吸試験中 6.誤って抜管または自己抜管。 7.次の高リスク因子のいずれかがある人:  ・65歳以上  ・心不全。  ・中等度から重度のCOPD。  ・APACHE II>12点  ・BMI>30。  ・喉頭浮腫を発症する危険性が高いなどの気道開通性の問題  ・適切な気道分泌物マネジメントが実施されていない  ・ウィーニングが困難または長びく。  ・2つ以上の合併症  ・人工呼吸器装着の遷延が7日

神経疾患による挿管が26%と33%と多く(並存症としては8%、13%とさほど多くはないので急性期Stroke/GBSなどが多い?)、頭部外傷後も12%、7%と多いことが当院とは患者群が異なる。神経疾患による挿管は通常の酸素療法群で多く、頭部外傷後はネーザルハイフローで多いことは予後に影響を与えうるので少し気になるところ。 なお、65歳以上と中等度以上のCOPDを除外していることも当院とはかなり患者層が異なる。COPDがあれば当然PEEPの恩恵が期待されるので、ネーザルハイフロー はより良い適応とはなりうるかも。 ①-2 検討対象となった介入(治療)  527人(平均年齢51歳、62%が男性)のうち、264人がネーザルハイフロー、263人が通常の酸素療法を受けた

①-3 検討された転帰(評価基準) primary  抜管後72時間以内の再挿管 <再挿管の定義>  1pHの改善がない、二酸化炭素分圧の向上がない、GCSスコア> 2点以上の低下  2呼吸筋疲労が明確  3十分なボリュームの負荷、昇圧剤の使用、またはその両方にもかかわらず、30分以上収縮期血圧90mmHg以下  4多量の分泌物  5高いFIO2にもかかわらずSpO2<85% secondary  抜管後の呼吸不全や呼吸器感染症 safety ②-1 課題に応えるためには、研究の対象は課題に沿っていたか、有効性を検討するための介入試験であったか、ランダム化試験か  ランダム比較試験である ③ 割付、層別化(stratified)しているか、1:1か  施設ごとに層別化している ④ 目隠し,double-blindとか、評価者・説明者・患者  方法については隠していないが、抜管直前に電話が無作為にかかってきて振り分けられる ⑤ intention-to-treatか、質は?  脱落者無し、intention-to-treat OK ⑥ 介入以外の治療は両グループで同様に行われたか  行われている OK ⑦ サンプルサイズ  80%の検出力を達成するために260人集めればいい→OK ⑧ 結果 primary  72時間以内の再挿管はネーザルハイフローで少なかった(13人[4.9%] vs 32人 [12.2%];絶対差7.2% [95%信頼区間2.5% to 12.2%]; P?=?.004)。通常の酸素療法群の再挿管率は過去の報告と同水準であった。

多変量解析では、ネーザルハイフローはあらゆる原因での再挿管の低さと独立して関連していた(オッズ比0.32 [95%信頼区間0.16 to 0.66])。1人の再挿管を予防するためのネーザルハイフローのNNTは14(95%信頼区間8-40)であった。

抜管後の持続的な呼吸不全が通常酸素群で多いことが、再挿管の最多理由であり、ネーザルハイフローが高濃度酸素を供給できるというメリットだけでも説明が可能となる。この理屈であればネーザルハイフローを予防的に用いる意義は乏しく、医療資源の問題からは抜管後の状態に応じてバックアップとして使用する方法でもよさそうである。

なお、心配される喀痰貯留や気道感染症の増加は認めていない。

Secondary  抜管後呼吸不全についてもネーザルハイフロー群で少なかった(22人/264人[8.3%] vs 38人/263人[14.4%];絶対差6.1% [95%信頼区間0.7% to 11.6%]; P?=?.03)。その他のsecondary outcomeについて有意差はなかった。抜管後12時間のFIO2(P <0.001)、再挿管が必要な喉頭浮腫(P = 0.02)、および再挿管を引き起こした呼吸不全(P = 0.02)は、統計的に有意であった。

ネーザルハイフロー群 で上気道閉塞が少ないことは、抜管後NPPVが有用なことからも予測された結果でした。つまり、ネーザルハイフローによる軽度のPEEPが有用だったのかも知れない。

抜管前にはT-tubeでSBTもしくはPS 7cmH2Oと書いてあるがPEEPは記載がないので、気になる。

抜管前にPEEPが不要かどうか吟味すべきなのか、抜管後気道浮腫に対してPEEPが有用だったのかは不明。  再挿管までの時間に両群で有意差はなかった(19時間[IQR12-28]vs 15時間[IQR9-31];絶対差-4 [95%信頼区間-54 to 46]; P?=?.66)。ICU在室日数も統計学的な差はなかった(6日[IQR, 2-8] vs 6日[IQR, 2-9];絶対差0日 [95%信頼区間?10 to 24]; P?=?.29)。鼻粘膜や皮膚に関するトラブルも含め、ネーザルハイフローによる有害事象は報告されなかった。 抜管後のオプションとしてネーザルハイフローを覚えておきたい。 初めから使用せずにバックアップとして使用でも良いのかどうか、またNPPVと比較した場合はどうなのか、が疑問として残った。

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