2002 年、 新たな喀痰誘発の方法が、 米国にて発明されました。 Medical Acoustics社のSanford Hawkinsにより発明されたラングフルートは、小型のたて笛状の器具です。フルートを吹くように器具内に口から息を吹き込むことで、16 ~ 22Hz、出力 110 ~ 115dB の音波を発生し、 この低周波の衝撃波は、理論的には気管・気管支分枝を下降して肺深部に到達し、気管・気管支分泌物および線毛を振動させ、これによって下気道の粘膜線毛クリアランスを大幅に促進することができ、その結果、自発的な痰の排出を促します。
このラングフルートが2016年度診療報酬改定で、結核が疑われる患者の結核菌検査時に算定できる排痰誘発法(44点、1日につき)として認められました。 文献的にも、外来受診した結核疑い患者において痰をその場で喀出できない場合に、ラングフルートを使用したところ88%で喀痰の喀出ができたと報告されています。 Respirology. 2009 Aug;14(6):899-902. 3%食塩水を用いるよりも侵襲がすくなく施行可能で、効果は同等とのことで、 当院でも導入して使ってみました。 (下図は自発排痰の塗沫検査で陰性だった35人について、ラングフルート使用と高張食塩水吸入法を用いて排痰誘発した結果)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201606/547238_2.htmlより引用
何人かで試した結果は、痰が上がってくる感じは確かにあるような気もしましたが、当院では以下の使用方法を守れる高齢者があまり多くないので、使える症例は限られそうでした。
1.深く息を吸い込んでからマウスピースをすっぽりとくわえ、息を吹き込む。
2.吹き込みを 2 回続けて繰り返します。息を吸う時にはいったん口を離します。
3.通常の呼吸 2 回分ほどやすみます。
4.上記の吹き込みおよび休憩を1セットとして、20セット行います。
5.5 分ほど待つと痰がのどの奥に集まってくるので、容器にはき出します
ラングフルートは慢性閉塞性肺疾患では症状緩和に役立つという報告もあります。 Clin Transl Med. 2014 Sep 23;3:29. 保険適応外ではありますが、うまく喀痰喀出ができない場合の、喀痰ドレナージ法の一つとしても選択枝が増えるかも知れません。食事をムセて誤嚥してしまった後に肺炎にならないように、これをするとか。