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連載:総合診療 クスリとリスク

雑誌「総合診療」9月の特集は症状・症候別 エコーを使った診断推論 Point-of-Care超音波です。

お題は

  • 超音波で聴きたい!肺エコー

  • ジェネラリストがマスターしたい!心エコー

  • 領域にとらわれない!横断的エコー

  • 腹部エコー 上腹部痛

  • 外科医と共有したい!腹部エコー

  • 腸管の動きも診たい!消化管エコー

  • 黄疸の鑑別に利用したい!胆道エコー

  • Wells scoreに基づいて行いたい!2ポイントエコー

  • 診療の幅が広がる!運動器エコー

です。超音波は本当に色々な場面で役立ちますよね。個人的には、肺エコーなどはよくやるものの、肩関節エコーはなんとなくみているだけだったので、これを契機にもう一度勉強しなおそうと思いました。

さて、私の特集は「高齢者に対する向精神薬」です。

当院でも毎月多くの患者さんが向精神薬による副作用で入院となっており、大きな問題と認識しています。

コリンエステラーゼ阻害薬はわずかな認知機能の改善と食欲低下・嘔気・めまい・疲労感・誤嚥性肺炎といった副作用とを天秤にかけて処方を行う。

コリンエステラーゼ阻害薬によるMMSEの差異は1点あるかどうかで、臨床的意義があるとされる3点には遠く及びません。食欲低下(NNH=7-19)や嘔気(NNH=3~13)といった消化管症状、めまい(NNH=8~37)、易疲労感(NNH=15~18)は良く認められる副作用ですので、食欲のない高度認知機能低下患者では、有益性が有害性にかき消される可能性が高いと思います。

非定型抗精神病薬は転倒や肺炎リスク増大と本人・介護者のQOL改善を天秤にかけて処方を行う。

抗精神病薬は死亡率を高める可能性がありますが、患者さんならびに家族が幸せに生活できる期間を延ばすことを期待して、BPSDに対しても使用されています。やみくもに処方すれば認知機能は低下(MMSEで0.34低下)、肺炎(OR 2.0)、骨折(HR 1.8)といった合併症が起こります。

睡眠薬は有害性のほうが2倍生じやすいので、不眠への理解、生活指導、認知行動療法を優先させて行う。

高齢者に対する睡眠薬は睡眠の質を改善するNNTは13ですが、有害事象のNNHは6ということで、

高齢者に睡眠薬を投与しても、満足する結果が得られるよりも害のほうが2倍生じやすい。

また睡眠薬は骨折を増やします。半減期が短く筋弛緩作用が少ないとされるゾルピデムであっても高齢者では大腿骨頚部骨折を2.2倍にします。

メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)でも傾眠は2倍、翌日の認知機能は低下します。しかも効果は4分早く寝付けるだけです。

高齢者では安易に睡眠薬を処方するのではなく、生理的に睡眠時間が短いことを理解させる必要があるというわけです。

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