卒業生からの献本です。ブログ「Hospitalist ~病院総合診療医」で知られる 高岸 勝繁 先生の著書です。
コモン疾患の診療を深く解説。 日々の何気ない診療に深みと楽しみを加えてくれる一冊。 例えば、 1章目の鉄欠乏性貧血 ・鉄欠の診断は青色強膜で。 ・倦怠感だけで貧血なくても鉄剤に反応する。 ・炎症性疾患患者ではフェリチンの値がいくつなら鉄欠? ・鉄剤の適正な量は? ・消化管内視鏡検査を行うべき患者は? など、日々の診療で知りたいことが盛りだくさん。 この本は研修医向けに書いたというが、そんなことは全くない。 後期研修医が勉強するにも深い内容。 裏付けとなる論文を明示するだけではなく、メモとして論文を要約してくれているので、 そのメモだけを見て「こういうような論文あるけどね・・・」と何気なく言えば 指導医としての権威を確立するにも役立つ一冊。 臨床医目線であることに加え、研修医との対話形式であるため、何より読みやすいのがよい。 1章7ページ程度だから何度でも簡単に読み切れる。 心配なのは、登場する研修医がデキ過ぎること。 この本を読んだ研修医達が自信喪失して鬱になってしまわないかと心配になる。 筆者(高岸先生)は形式上、丸太町病院卒業生で私の教え子であるが、正直、彼に教えることは何もなかった。 そんな可愛げのない研修医だった彼が、私の発案である「入院患者の6D」を引用していて驚いた。 他の項目は以下の通りで、 A 良く遭遇する疾患を深めましょうというのが多い。 2 ビタミンB12欠乏症 3 良性発作性頭位変換性めまい症 4 急性前庭症候群 7 尿路結石症のピットフォール 10 インフルエンザを巡るあれこれ 12 肺炎①:肺炎の診断 13 肺炎②:市中肺炎のマネージメント 14 肺炎③:誤嚥性肺臓炎/肺炎 15 尿路感染症いろいろ 16 入院中の発熱,Clostridium difficile 感染症 17 急性単関節炎:結晶誘発性か,化膿性か 18 AST,ALTの上昇を見たときに 総合診療科あるある、が盛りだくさん。 診断のピットフォールが網羅されており必見。 エビデンスが乏しくてもグラム染色は臨床的に明らかに大事であることが一貫して記載されており同感。
誤嚥にACE-Iはどうする? などにも丁寧なエビデンスに基づく解説を行い、エビデンスがないものにも自分ならばどうするかを示しており研修医の道しるべになる解説を心がけている。 B 次に、さほど多くはないけど見逃すと重篤なので知っておきましょうというのが含まれる。 5 副腎不全 6 急性陰嚢痛:精巣捻転 11 深頸部感染症 19 市販薬による中毒症
あえて心筋梗塞とか大動脈解離ではなく、勉強し忘れている人が多いこういった疾患を取り上げているようだ。確かに急性陰嚢痛は任せておけ!という研修医はいない。
C 最後に見落とされているけど、知っているとたくさんいるよ、という疾患の紹介 8 腹痛①:腹膜垂炎 9 腹痛②:前皮神経絞扼症候群
マニアック?と思った人こそ読んでほしい。結構いるんだな、これらの疾患。
それ以外に 肺エコー 抗菌薬,経静脈投与から経口投与への切り替え 持続皮下輸液 なども紹介されている。抗菌薬のバイオアベイラビリティー一覧は見やすい。 コモンで読みやすい内容なのに、読み応えのある一冊でした。