本日の適々斎塾は夏の特別企画。
Choosing wiselyについて取り上げました。
まずは徳田 安春(JCHO本部顧問)のお話で、 「Choosing wiselyの概要」でした。
1.リスクの乏しい脂質異常症にスタチン処方しますか? 60歳の日本人女性の脂質異常症のNNTは100人(10年)。 レイク・オベゴン効果:研究対象者はリスクある人を含んでおり、リスクない人ならばもっと低いはず。 スタチン処方は賢い選択だろうか? → 会場からは「私は処方しないが、”はやっていない病院”なら経営のために処方する」という意見も。
2.無症状の未破裂AVMどうするか? 外科的処置するほうが予後不良! 海外には人間ドックはないそうです。知らなかった。 韓国は甲状腺癌の検診があるので、罹患率高いが、効果には疑問視。
3.PMRでステロイド投与量 80歳 DM サルコペニア 0.19±0.03mg/㎏のPSL量でよいというデータがあるそうだ。これは使える。 BMC Musculoskelet Disord. 2011 May 14;12(1):94.
私の話は 1.抗核抗体は膠原病に特異的な症候がなければ検査しない。 同時に特異抗体を検査しない。1年以内に再検査しない。 血算・尿検査までした時点でSLEの診断基準の2項目以上満たせば、抗核抗体を提出。
2.呼吸機能検査はBA/COPDの診断には重要 検査することで過剰診断と不要な治療を減らせる。 手に持てるハイ・チェッカーという機械や、PEFでもある程度代用可能。 高齢者はGOLD stage II(1秒量<80%)で初めて病的意義がある。
3.アトピー性皮膚炎やじんま疹に通常はIgE検査しない。 じんま疹の原因は病歴・身体所見で検索を行うべきで、検査は通常必要としない。
4.尿管結石にルーチンCT検査しない。 超音波検査で水腎に加え、AAAをチェックせよ。 CTは臨床所見に勝てないんだ、という症例
といった所です。
北 和也(やわらぎクリニック)先生 「薬も賢く選択!PolyphamacyとChoosing wisely」
Polypharmacyというのは最近の言葉かと思ったら150年以上前から言われている事だそうです。
日本は世界の人口の2%だが、薬剤費は世界の10%を占める。
週刊○○に取り上げられた副作用。そういったマスメディアが取り上げた副作用を一般視聴者がみると2割が自己中断してしまう。処方内容に疑問を持った場合、医師に質問しない人が1割。
マスコミ報道で中断された内服中断は半年後には再度服薬開始する。
我々は正しい情報を患者さんに伝え続けなければならない。
PPIの適切なやめ方。これ臨床的に参考になりました。
トレーシングレポート:FAXでもできる薬剤の疑義照会もどき。便利かも。
お題を頂きましたNSAID潰瘍は疼痛は少ないのか?という経験側は、その通りという論文ありました(Am J Gastroenterol. 2001 Feb;96(2):380-4.)。それを調べる目的ではないので必要な統計的処理がされていませんが、その傾向はあるとは言えそうです。
松下 達彦(済生会滋賀県病院)先生 「Choosing wisely な診療がもたらすもの」
症例を介してChoosing wiselyとは何かを皆で考えていくワーキングショップ形式。
虫垂炎を大して疑ってないのにCT読影で虫垂炎→ 検査後確率16%ですが手術してやはり陰性。検査前確率の見積もりが大切で、検査結果を過信してはならない。
肺炎あればCTにも警鐘。当院でも肺炎にCT施行したらその理由を翌日の回診で追及されます。でも発がんリスクについてはそこまで実際には考えてなかった。
検査しすぎを指摘した、されたことがあるのは会場の半数程度。う~ん。当院では全員私からダメ出しは絶対されているけど、世の中優しい。
問診も不要な問診は減点されるシステムでチーム対抗。面白い趣向でした。
全体的にみてフロアからの質問がアツい。熱い。厚い。開業医も研修医も自由に意見する勉強会、一方向ではない勉強会っていいですね。
自分の中での一番の収穫は、暑かったのでスーツもネクタイも鞄の中にしまったまま(忘れたフリ)だったけど、それでよい雰囲気だったことです。無礼講でOKな心広い人が多いし、今度からラフな格好で行こう・・・。