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Journal club: NYHA III-IVのCHFにSpironolactone追加効果あり

1999年のNEJMの報告。RAA系を阻害することが心不全予後改善するんじゃないか、という大きな流れを作った論文の一つ。

N Engl J Med. 1999 Sep 2;341(10):709-17.The effect of spironolactone on morbidity and mortality in patients with severe heart failure. Randomized Aldactone Evaluation Study Investigators.

1.その試験は焦点が明確な課題設定がなされたか?

ー研究対象者(患者)ー

inclusion criteria

・登録の6ヶ月以内にNYHA Ⅳ度の心不全と診断されている者

・登録の6週間前にNYHA ⅢもしくはⅣ度の心不全と診断されている者

exclusion criteria

・カリウム保持性利尿薬を使用している

・手術可能な弁膜疾患がある

・先天性心疾患

・不安定心疾患

・肝不全

・担癌患者

・心不全以外の生命を脅かすような疾患がある場合

・心移植後もしくは移植見込みの患者

・Cr > 2.5 mg/dL もしくは K > 5 mmol/L

ジギタリス服用者が7割以上。これは今のプラクティスと大分違うなあ。低Kがジギ中毒を顕在化させるため、試験結果に影響を与えた可能性はある。βブロッカーも1割のみで使用されており大分感覚が異なる。利尿剤は全例で投与だが3割でK補充されているため、今の臨床の感覚でいうとスピロノラクトンは当然いれそうなケースがほとんど?

ー研究対象となった介入(治療)ー

介入群は1日1回スピロノラクトン25mgを内服

対照群はプラセボ内服

・スピロノラクトンは8週間経過して高K血症がない場合は50mgに増量を行う

・高Kや腎機能障害などの副作用が生じた際は25mgまで減量可能

ー検討された転帰(評価基準)ー

・主要評価項目として全死亡率

・二次評価項目として心疾患関連の死亡率,心疾患関連の入院率,NYHA分類の変化

2.その試験は設定された課題に答えるための研究方法がとられていたか?(研究デザイン)

研究デザインとしてはRCTでありスピロノラクトンの有用性を評価するために妥当である

3.患者はそれぞれの治療群にどのように割り付けられたか?

・スピロノラクトン群とプラセボ群に無作為に1:1に割り付けられていると記載があるが具体的な方法について記載がなされておらず。歴史を感じます。

ーグループの差が結果を変えるほどの違いがなかったかー

・両群に結果を変えるほどの差はなかったと記載あり

4.研究対象者(患者),現場担当者(医者など),研究解析者は割付内容を目隠しされていたか?

・double blind study

・評価者も登録患者の個々の死亡原因や入院の理由については知らないようにされている

5.研究にエントリーした研究対象者全員が研究結果において適切に評価されたか?

1995年3月24日から1996年12月31日までに登録された世界15カ国の195施設から選ばれた1663名の患者のうち841名がプラセボ,822名がスピロノラクトンに割り付けられた.follow up中に414名(200名がプラセボ,214名がスピロノラクトン)が治療効果が見られない,副作用,管理上の理由などで薬剤中止となり,心移植のためさらに19名(11名がプラセボ,8名がスピロノラクトン)が治療中止された。脱落した人に対しては定期的に電話連絡を行い現在の状態を確認した。

6.研究対象となった介入以外は,両方のグループで同じように治療が行われたか?

登録時の各々の薬剤について記載あり(Table 1)

(登録後の外来や血液検査の日程も記載がされている)

7.その研究の対象患者は,偶然の影響を少なく留めるのに,十分な数であったか?

プラセボ群の死亡率が38%,スピロノラクトン内服群では死亡率が17%減少,毎年5%の患者が脱落するなど

色々と書かれていたが肝心の数については記載なし

8.結果はどのように示されたか

ー主要評価項目ー

プラセボ群では386名(46%)が死亡したのに対しスピロノラクトン群では284名(35%)が死亡した。

(スピロノラクトンはプラセボ群に比べて30%死亡率を減少させた?)

ARR = 46 - 35 = 11%

NNT = 100 / 11= 9.1人 → 9.1人治療すると死亡率が1人減る(平均2年間追跡)

ー二次評価項目ー

評価期間中に心疾患で死亡した人数はプラセボ群で314(37%),スピロノラクトン群で226名(27%)であり,スピロノラクトン群の方がプラセボ群に比べて31%死亡率を低下させた

評価期間中に心疾患で少なくとも1回入院を要した割合はプラセボ群で336名,スピロノラクトン群では260名であった。

スピロノラクトンという利尿剤を入れると主に心不全が少いために死亡率が下がっているが、これは当然のような気もするが。

サブグループ解析ではLVEFが26%以上かどうかは関連乏しかった。ACE阻害薬使っていない人は信頼区間が広いためだけかもしれないが有意差なくなっているので、まずはACE阻害薬を入れるべき。またジギタリス使用していない場合にも有意差なくなっている。nの問題だけならばよいが低Kが関係している部分があるのか? これ以上のサブグループ解析からの深読みは良くないので他の試験で確認すべき。

ー副作用ー

・K値やCr値はプラセボ群,スピロノラクトン群ともに有意な違いは認められなかった。

(しかしながらスプロノラクトン群の方が内服開始一年間でCre 0.05-0.1 mg/dL,K 0.3 mmol/L程度上昇した)

・重大な高K血症はプラセボ群で10名,スピロノラクトン群で14名起きた(P=0.42 有意差を語るには数が不十分。スピロノラクトン群が多い傾向)

・女性化乳房はスピロノラクトン群で61名(10%)プラセボ群で9名(1%)と有意にスピロノラクトン群の方が多かった。

EndFragment

心不全の治療方法が大分現在と異なっており、鵜呑みにはできない論文だが、スピロノラクトンなどのRAA阻害薬を使用する背景はよく理解できた。その後むやみにACE阻害薬+スピロノラクトンを使うと高K血症などの副作用が増えてよくない、という報告がNEJMから出されていることには注意。

参考:その後の論文も合わせ現在のスピロノラクトンの推奨としては以下が目安。

・症候性CHFでLVEFが35%以下(STEMI後ではLVEFが40%以下+症候性CHFかDM)では使用する。

・eGFR>30でK<5.0であること(その後のモニタリングもできること)

・ACE-IかARBが導入されていること。(ただしACE-I+ARBのコンビネーションは推奨されていないことに注意)。

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