Platelet transfusion versus standard care after acute stroke due to spontaneous cerebral haemorrhage associated with antiplatelet therapy (PATCH): a randomised, open-label, phase 3 trial. Lancet. 2016 Jun 25;387(10038):2605-13.
<abstract> 背景:抗血小板薬内服中の人々での脳出血後の血小板輸血は死亡率を減らしたり出血の程度を抑制したりする可能性がある。筆者等は血小板輸血が死亡率を減らすか、あるいは脳出血の程度を減らすかを検討した。
方法:多施設研究RCTでありオランダ、英国、フランスの60の病院で施行された。筆者等は少なくとも7日以上の高血小板薬を内服中でテント上出血発症後6時間以内で少なくともGCS8点以上のものをenrollした。 標準治療群と標準治療に加えて画像で出血が判明してから90分以内に血小板輸血を行われた群に分かれた。プライマリアウトカムは死亡率と3ヶ月後のmodified Rankin Scale(mRS)とした。
結果:2009年2月4日〜2015年10月8日まで190人の参加者が登録され、そのうち97名がランダムに血小板輸血群に、93人が標準治療のみの群に割り振られた。
死亡率及び3ヶ月後のADLは血小板輸血群で悪化していた(OR2.05 95%CI:1.18-3.56, p=0.0114)。血小板輸血を受けた40名(42%)は入院中に有害事象が見られた。標準治療を受けた群の28名(29%)が、血小板輸血を受けた23名(24%)が死亡した。
結論:血小板輸血は抗血小板薬内服中の脳出血患者において標準治療に対して劣っている。抗血小板薬内服患者において血小板輸血は推奨されない。
①-1 研究対象者(患者)
inclusion criteria
18歳以上の、頭部画像で確認された非外傷性テント上脳内出血患者で、GCS8-15の患者。脳出血前のmodified Rankin Scale (mRS) は0(まったく症候がない)か1(症候はあっても明らかな障害はない)。抗血小板薬(アスピリン、カルシウムカルバサラートといったCOX阻害薬、ジピリダモール、クロピドグレルなどのADP阻害薬)は少なくとも7日以上の内服中である事。血小板輸血は、発症後6時間以内で頭部画像後 90分以内に開始する事。
exclusion criteria
硬膜外・硬膜下血腫、24時間以内に外科的治療を行う予定であった動脈瘤や動静脈奇形(画像で判断)の患者、脳室内出血が側脳室後角以上に拡大した患者、血小板輸血に対する影響因子(ビタミンK拮抗剤使用(INR≤1.3)、凝固障害の既往、血小板減少症(10万以下)、精神的能力の欠如、死が切迫している)を持つ患者、外科的治療を受ける可能性が高くなるテント下や大きな脳室内血腫
①-2 検討対象となった介入(治療)
ヨーロッパや自国のガイドラインに従った標準治療
脳内出血発症の6時間以内と頭部画像診断の90分以内に血小板輸血 (COX阻害薬内服患者は5単位、ADP受容体 阻害薬内服患者は10単位輸血)
①-3 検討された転帰(評価基準)
primary
3ヵ月時点のmRSの差
secondary
• 3ヶ月後の生存率(mRS 1-5)
• 3ヶ月後のpoor outcome(mRS 4-6)
• 3ヶ月後のpoor outcome(mRS 3-6)
Secondary Explanatoly Outcome
最初の画像評価から24時間後の出血増加量
Safety Outcome
• PC輸血による合併症 • 脳出血そのものによる合併症 • 痙攣 • 感染(尿路感染、肺炎) • その他の重篤な合併症
②-1 課題に応えるためには、研究の対象は課題に沿っていたか、有効性を検討するための介入試験であったか、ランダム化試験か RCT試験である
③ 割付、層別化(stratified)しているか、1:1か 標準治療と血小板輸血は1:1にweb-basedでコンピューターでランダムに割り付け 病院ごとと、脳出血前の抗血小板療法で層別化している
④ 目隠し,double-blindとか、評価者・説明者・患者 患者・研究者はマスクされず、評価者・データ解析者はマスクされた、open label試験
⑤ intention-to-treatか、質は? intention-to-treatである
⑥ 介入以外の治療は両グループで同様に行われたか 行われている
血圧管理は不詳
⑦ サンプルサイズ Primary outcome での死亡またはmRS4-6となる患者が、標準治療 単独群70%、PC輸血群で50%、絶対リスク減少率20%と計算し、検出力 80%で必要なサンプルサイズは各群95人ずつ、計190人 しかし、順序ロジスティック回帰分析に解析方法を変更したら、同じサンプルサイズ、ORとしたときの検出力は91%となった
⑧ 結果
primary Figure2、死亡率及び3ヶ月後のmRSは血小板輸血群で悪化していた(OR2.05 95%CI:1.18-3.56, p=0.0114)。
secondary Table2、3ヶ月後のmRS score(4-6)は血小板輸血群で悪い、3ヶ月後の生存率と、mRS score(3-6)、24時間後の出血量は2群で有意差はなかった。
Severe adverse event Table3、血小板輸血群で40人、 標準治療単独群で28人が起こしている。大半は脳出血の拡大か、感染症で、血小板輸血群で多い。
コメント:抗血小板療法中の脳出血における血小板輸血の有効性がRCTで検討された結果,血小板輸血が転帰改善の点で無効であるばかりか劣っていることが示された。抗血小板療法中の脳出血への血小板輸血は推奨されないという結論。この結果の要因を特定することはできないが,出血性梗塞症例の混入,血小板輸血の血栓形成や炎症の助長作用などが推定されている。
ただしGCS<8例や手術を要しそうな大きな血腫を呈した患者での血小板輸血の有益性を否定するものではない。