N Engl J Med. 2016 Sep 29;375(13):1242-52
〈要約〉
背景:DES、BMSの長期使用における死亡率、心筋梗塞、反復の再灌流術、ステント血栓症、QOLに関するデータは乏しい。
方法:我々は安定もしくは不安定な冠動脈疾患を有する9013人をそれぞれDESもしくはBMSステントを用いてPCIを施行する群に無作為に割つけた。DESの群では、患者の96%がエベロリムスかゾタロリムスを塗布したステントを使用した。Primary outcomeは、フォローの中央値5年における全死亡と非致死的・自然発症の心筋梗塞の複合outcomeとした。Secondary outcomeは反復の再灌流術、ステント血栓症、QOLとした。
結果:6年後のPrimary Outcome発生率はDES群で16.6%,BMS群で17.1%(hazard ratio, 0.98; 95% confidence interval [CI], 0.88 to 1.09; P=0.66))であり、両群に有意差はなかった。反復の再灌流術を要したのはDES群で16.5%、BMS群で19.8%(hazard ratio, 0.76; 95% CI, 0.69 to 0.85; P<0.001)であった。ステント血栓症の発生はDES群で0.8%、BMS群で1.2%
(P=0.0498)であった。QOLは両群で有意差を認めなかった。
結論:PCIを施行した患者において、DES、BMSそれぞれを留置した患者間で全死亡と非致死的・自然発症の心筋梗塞の複合outcomeに有意差を認めなかった。反復する再灌流を要する割合はDES群の方が少なかった。
チェックシート
1 その試験は焦点が明確な課題設定があるか?
①患者・施設
2008年9月15日~2011年2月14日、ノルウエーの8施設でPCIを受けた患者。
(死亡率が予想以上に少なかったため、参加者を9000人に増やし、2014年12月まで延長)
〈Inclusion criteria〉
・18歳以上
・安定狭心症、ACS患者でステント留置に適した固有血管・CABGグラフト病変を有する
〈Exclusion criteria〉
・ステント留置の既往がある患者
・分岐部の病変でありtwo-stent techniqueを要する
・冠動脈病変よりも重症な病気をもち、生命予後が5年以内と予想される
・長期間のDAPTが禁忌となる
・ワーファリンがすでに処方されている
②介入
PCIは術者による標準的な手法で施行され、それぞれの群では同じステントを使用
PCI後、両群ともバイアスピリン75mg、クロピドグレル75mgを9ヶ月内服
再狭窄の際はバルーン拡張術、Cutting balloon、Des留置などで治療
③評価基準
Primary Outcome:中央値5年のフォローにおける死亡と非致死的自然発症の心筋梗塞の複合エンドポイント
Secondary Outcome:致死的・非致死的な手技関連の心筋梗塞・脳梗塞、不安定狭心症による入院、再灌流、CABG、ステント血栓症、重大な出血
2その試験は設定された課題に答えるための研究方法がとられていたか?
RCT
3 患者はそれぞれの治療群にどのように割り当てられたか?(割り付け)、患者間の差は?
診断後にDES、BMS群に1:1で割り付け(Block Randomization)し施設ごとに層別化
患者間の差
ステント留置期間、病変部位を除いては両群には差なし
3割がACSではない、糖尿病罹患率の低さ、lesion complexity(B2、C<50%)は現状と解離している?
4 目隠しはされていたか?
解析者は盲検化(appendix p17)
5 研究にエントリーした全員が研究結果において適切に評価されたか、ITTか?
参加した施設ごとの規定でフォロー
外来受診のプロトコールやルーチンのフォローアップCAGはなし
中央値59か月間のフォロー(p1245)、死亡に関しての追跡は100%であるが5人に関しては完全な追跡はできていない。ITTである。
6 研究対象となった介入以外は両方のグループで同じように治療が行われたか?
二次予防の内服薬は現在のガイドラインに則り処方
7 その研究の対象患者数は偶然の影響を小さく留めるのに十分な数であったか?
Primary outcome で3%のグループ間の差を93%のpowerで検知するためには8000人必要→ITTで9013人が解析されておりNは問題ない。
企業が一切関与せず,国(ノルウェー)の患者登録システムにより99.9%がfollow-upされた比較的質の高い研究
これまでの登録研究やそれを含むメタ解析で時として有意差がついていた生命予後やMI発症率(本試験ではPCIに関連しない自然発生MIに限定している)には全く差がなく,Quality of Lifeも同程度だったことがこの報告から分かった。両群でDAPT 9ヶ月としているのは現状とは異なるのではないかと思うので、出血率と再閉塞率は現実世界と違う可能性がある。