私は「腹部身体診察アップデート」を講演しました。
会場はモニター3つにプロジェクター2つのマルチ・スクリーンでまるで戦略会議室みたいでした。
Special Lecture 2は京都府消化器がん検診委員会 委員長 前川高天先生の
「ジェネラリスト・消化器内科医のためのH.pyloriの診断と治療」でした。
この領域はここ数年で検査も治療も制度も大きく変わっている領域なので大変勉強になりました。
昨年の勉強会は消化器科の先生と循環器科の先生が共に抗血栓薬について議論したそうで、総診的にも大変面白い勉強会だと思いました。
さて、私のメモ書きから内容を少し紹介。
・Hp陰性なら胃癌発生の可能性は、1年間で交通事故で死亡する確率と同じだが陽性なら100倍程度
京都では3つの胃癌予防対策がされている。
・若年者ピロリ肩鎖モデル事業
高校生に尿中抗原でスクリーニングする(偽陽性多いので便抗原で確認は必要)
・成人・結婚世代向け市町村導入モデル事業
成人式や結婚を契機にピロリ検査を行う
・働く世代向け市町村導入モデル事業
一定の世代に対してABC検査を実施する市町村に対して補助
内視鏡検査は感染状況を確認する意義が付加されてきている。未感染(萎縮なし、胃角までRAC:規則的な集合細静脈の配列)、現感染(びまん性発赤(46%)、点状発赤散在(42%)、粘稠白濁粘液(28%)、皺壁腫大(11%)、粘膜腫脹(6.4%)、胃小区拡大、鳥肌胃炎(1.4%))だけではなく既感染(粘膜萎縮、腸上皮化生、黄色腫)と過去感染(地図状発赤)も分かる。
しかし、現感染所見だけでは感度70%のみ。既感染所見である粘膜萎縮で除菌歴なければ現感染疑う。
血清抗体検査はEプレート法でエビデンスが構築された。現在は簡便なラテックス法が最近よく使われているが、相関性は悪い。なんとR=0.484だそうです。SRLはEIA法だったので大丈夫。23例/295例が抗体価<10と感度は9割程度。除菌6か月で1/2以下の抗体価となる。しかし8年後でも抗体価≧10のことがあり、15年以上でも抗体価≧5のことあり、抗体価<3と全例なってくれるわけではないので、絶対値での除菌評価は難しい。
UBTはカットオフ2.5だが、2~5までがGray zoneだが、例外的に10ぐらいまでは偽陽性ありうる。除菌できていてもDelayed clearanceと呼ばれる偽陽性もあるのでGray zoneならば即再除菌すべきとは言えない。だから8週は間隔を開けたい。
お勧めの除菌判定:除菌終了後2カ月でUBT(PPI切れなければ便抗原)、場合により6か月後の抗体価の前値との比較。
感受性検査:徐々に耐性化すすんでおり、CAM耐性が36%、MNZ耐性は3%。CAMがSではAMPC+CAM+PPIで90%の除菌率。Rの場合はCAMで半数、MNZにして90%の除菌率。
アドヒアランスの低下
一次除菌内服0.5%
除菌判定13%
二次除菌46% ⇒ 一次除菌で済ませたいところ。感受性検査の有用性が示唆。
PPIが食前投与のほうが吸収率が良いので食前投与推奨
二次除菌判定4%
薬疹あればMNZ、STFX、MINO使う手もある。
救急領域、集中治療領域を中心としてお世話になっている志馬先生、後期研修医時代の後輩の遠藤先生とパチリ。