小児の軽症頭部外傷でCTをとるかどうか。PECARN、CATCH、CHALICEと様々なルールがあるが、どれがよいのだろうか。
Lancet. 2017 Apr 11. pii: S0140-6736(17)30555-X. doi: 10.1016/S0140-6736(17)30555-X. [Epub ahead of print]
Accuracy of PECARN, CATCH, and CHALICE head injury decision rules in children: a prospective cohort study.
PMID:28410792
RECARNというのは2歳未満と2歳以上で分けるちおうのがちょっとめんどくさい気はするが、多数の小児頭部外傷のデータから導かれた優れたルールです。米国で開発されました。
Children's Head Injury Algorithm for the Prediction of Important Clinical Events (CHALICE) head injury ruleはイギリスで作られたもので、Canadian Assessment of Tomography for Childhood Head. Injury (CATCH) ruleはカナダ製。
それぞれ除外基準などもあるので詳しくは原文を参照してほしいですが、簡潔にまとめた表を別論文から引用します。
Ann Emerg Med. 2014 Aug;64(2):145-52, 152.e1-5.
今回はこれらの3つのどれが優れるか、多施設共同研究コホートで2万137人の小児頭部外傷患者で調べました。
結果としてRECARNの感度が高かったです。
3つのルールの診断特性直接比較するために、外傷から24時間以内に受診し(CHALICE以外はInclusion criteriaとして外傷から24時間以内という縛りがある)GCSスコアが13~15だった小児の軽症頭部外傷患者1万8913人を対象に、3ルールの感度を比較してみても似たような結果です。
RECARNは感度が高いことは別の報告でも示されています。
Ann Emerg Med. 2014 Aug;64(2):145-52, 152.e1-5.
2歳未満のPECARNにおける、”前頭部以外のタンコブ”と”親からみて何かおかしい”は12-13%づつと高頻度に認める所見なので、この2項目は忘れずに確認ればなりませんね。
一方、2歳以上のRECARNでは意識消失と嘔吐が重要になってきます。これは成人と同じですね。
また、いずれの年齢においても”ハイリスクな受傷機転”と”何となく意識がおかしい(元気がない、遊ばない)こと”に注意を払う必要があります。
CATCHは項目が少ないのは良い事ですが、ハイリスクな外傷機序に頼り過ぎているため感度が低いことが問題です。CHALICEは項目数多く分かりにくいですが特異度の高い所見(5分以上の意識消失や健忘など)を多数使用していますので、言われれば納得できるものばかりではないでしょうか(逆にいうと敢えて覚えるに値しない?)。