ケタミンはN-methyl-d-aspartate (NMDA) receptor antagonists なのでストリートドラッグとして流通する危険性のある薬剤ではある。 しかしながら、麻酔、鎮痛以外にも抗うつ作用が期待されている薬剤でもある。 ラットに使用した結果、血中濃度から考えると薬効があるとは考えにくかった1週間後にもストレス耐性が高くなっていることが分かっている(これはラットに1週間のWash out timeを設けて繰り返し実験していたために偶然発見されたそうです)。
そのケタミンの抗うつ効果に対するメタ解析
Neuropsychiatr Dis Treat. 2016 Nov 3;12:2859-2867.
成人のうつ病患者をエントリーし、うつスケール改善するかを調べる。エントリーされたのは9~72名を対象者とした小規模の研究ばかり。
米国の研究が大半を占める。RCT、二重盲検は最低条件だが詳しい質評価は? kタミンは0.5mg/kgの単回投与が原則。
24時間後には反応、寛解はケタミンで確かに多いが、これはただ薬効でEuphoricになっているだけかも。
72時間後もケタミンは抗うつ作用がありそう
そして7日後も同じ。動物実験の結果のように単回投与でも7日間持続的な効果を示した。医学的観点から離れて、あえて危険な例えをするならば、息抜きのためにストリートドラッグを時々すればストレスが発散するという事。
上記の表をみてみると、小規模な研究が多く、個々の論文では有意差を証明できていないものが多い。また小規模な研究ほどケタミンが有効であったと報告している傾向が読み取れます。論文にはforest plotが無かったですが、Publication biasはあるんでしょうね。
ちなみにelectroconvulsive therapyに用いると1-2週間あるいは3-4週間後に抗うつ効果が認められているが、 Eur Neuropsychopharmacol. 2017 Jan;27(1):29-41. 1か月後には差異はないとされています。息抜きは月1回では少ないのかもしれない。 Br J Psychiatry. 2017 Mar 2. pii: bjp.bp.116.189134. doi: 10.1192/bjp.bp.116.189134. [Epub ahead of print]
さて、慢性のPTSDに対してケタミン0.5mg/kgの単回投与は長期的に効果があるという報告もあり、熱傷や多発外傷で処置などで鎮静・鎮痛を図るのにケタミンを使えば、うつやPTSDが減ってくれるのではないかとは期待はします。 JAMA Psychiatry. 2014 Jun;71(6):681-8.
なお、より少量のケタミンでは効果乏しいという報告がありますが、高用量や連続使用ではどうなるか不明です。 つまり、処置のためケタミンを連日使用した場合には中毒・離脱などが問題となり、うつやPTSDが逆に増えるかも知れない。だってストリートドラッグですから。耐性がどうなるかも分からない。だから、うつ・PTSD予防を期待してケタミンを使うには時期尚早と思う(他により効能と副作用が明確となっている薬剤の使用を優先する)。