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第8回 SSYクリニカルカンファレンスで講演しました


大阪府済生会吹田病院にお邪魔しました。

1年目研修医を中心に30名ほど集まって頂き、症例検討会をしました。 これがまた難しい症例。症例提示を振り返りながら(○)、私なりに出したパール(★)を書いていきます。

○22歳男性 倦怠感 ★倦怠感のように非特異的な主訴の場合は+αを探す。  +αには臓器を絞るものと、機序を絞るものがある。  呼吸器症状、消化管症状、泌尿器症状、筋骨格系症状などと、炎症所見を確認したい。

○全身の疼痛、両手のしびれが陽性。発熱・寝汗・食欲低下・体重減少はない。 ★しびれがあるならば詳細な分布の確認や神経所見が重要➡神経所見は最後まで秘密だったのでなかなか鑑別絞れなかった・・・ ★両手のしびれならば、頸髄病変、多発神経炎、両手根管症候群、過換気症候群といったところを考える。

○両手のしびれは2か月続いており、手掌手背・橈側尺側に関わらずあり。 ★一つの頸髄レベルではないものの、頸髄病変を第1に考えたい。やはり神経所見が大事ではあるが、下肢のしびれがないので通常の多発神経炎では考えにくい。多発神経根炎(ギランバレー症候群)、Sjogren症候群などによる後根神経節障害もあるが、典型的とは思わない。

○発症同時期に一過性の上気道症状があった。 ★ギランバレー症候群ならば4週ルールがある。4週以内の先行感染はギランバレーを示唆するが、同時発症ということはない。また4週以内にピークに達しておらず、運動障害の病歴がなさすぎる(しびれは高頻度で訴えるが他覚的所見は軽微なので神経所見で確認したい)。CIDPならば8週ルールとはなりますが。

○ドイツ出身で南アフリカ渡航歴あり。 ★HIV感染リスクの高い生活を送っていたようだが、発症から4ヶ月前の事であり症状からも急性HIV感染症とは思わない。それでも高リスクな患者ということを勘案するとHIV・梅毒の検査は妥当➡陰性。ダニ媒介性脳炎も多い地域だと思うが、これも発症時期が冬なのと症状が合わない。

○最初の発症はジムで体を鍛えだしてから。その後も運動時に一過性の視覚障害(霧視?)が出現する。 ★運動時に出現するというのは高安病のような病態での虚血では一般的ではないと思うが、もやもや病や類もやもや病ならば過呼吸誘発で一過性の神経症状はあってよいかも知れない。しかし視覚症状だけを呈するのは典型的ではないし1時間近く継続するのは虚血としては長い。頭痛の病歴があれば片頭痛(やRCVS)などの血管攣縮を想起してもよいが、運動誘発が説明困難。とすると、多発性硬化症が最も考えやすい。体温が高まると神経所見が増悪するUrtoff現象と理解できるのではないか。

○後の身体所見で右半身で腱反射亢進と軽度筋力低下があった。 ★身体所見は嘘をつかない。視覚症状と錐体路症状を一つの病変だけでは説明は困難であり、おそらく空間的多発はあるだろう。

○渡航者でコストの面もあり、頭部MRIだけの検査となったが、上丘にFLAIRでHIAの病変があった。 ★T1 black holeというT1WIで低信号となるのがあれば脱髄病変を疑う助けになる。空間的多発を確認するため脊髄MRIも必須ですが、おそらくMS(あるいはClinically isolated syndrome)でしょう。海外、特に緯度の高い地域では多い病気なのでドイツ人というのがヒントだったのですね。

この症例に対して会場からの鑑別疾患として、正解があがっていたことに驚いた。レベルが高いなあ・・・。 鑑別上がった時に言った言葉 ★20-40歳の非特異的な神経症状で多発性硬化症は必ず除外しなければならないが、50歳以上での発症は稀である。 ★多発性硬化症ならば視覚症状(特に日本では)、聴覚症状、膀胱直腸障害がある事も多い。

大変勉強になる症例をシェア頂いて感謝です。繰り返し聴取した病歴がきっかけとなり、身体所見が決め手、検査は確認、というとても美しい症例でした。

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