「ベッドサイドで行うメタ解析」をやりたいと言ってから数年。
メタ解析で大変なのは論文の選択と質の評価。その二つは既存のメタ解析に任せると割り切ってしまうことで、臨床医でも簡単にメタ解析ができるのではないか、という企画。例えば 既存のメタ解析の結果に反するような、新たな論文が発表された場合、両者を掛け合わすことぐらいならすぐにできます。また、除外したい論文がある場合、それを除いて解析することも簡単ですから、より目の前の患者に近いサブグループ解析も可能でも、全然進んでいませんでした。
久々にRevmanの使い方の復習かねて、今回は気胸の診断における超音波検査について解析してみました。
今更ですが、健常者では超音波検査にて臓側胸膜が呼吸性に動くことと、胸膜から肺実質深部まで達する帯状の高輝度なアーチファクト(commet tail artifact)が確認され、これらがなければ気胸と診断します。また健常者では肺実質の不均一な反響エコーがMモードでは砂状エコーと称されますが、気胸ではこれが消失します。特に仰臥位の単純写真は感度が低いので外傷患者や集中治療領域では超音波検査が重宝されます。
今回の元ネタとなるメタ解析は Chest. 2011 Oct;140(4):859-866. です。
この論文をメタ解析しなおす(=ベッドサイドで行うメタ解析)理由はレントゲンと超音波検査を同じ患者群で行っていない研究を含んでいるのが気に入らなかったことと、尤度比の計算がされていなかったため。
早速、同患者に超音波検査とレントゲン検査を施行した14研究だけをRevmanにて解析したところ以下のようになりました。
★超音波検査
★胸部単純写真
やはり、超音波検査は感度が高く優れた検査ですね。メタ解析の論文では感度、特異度、ORが記載されていることが多く、Revmanでもこの3つは解析できるのですが、私は尤度比が使い慣れているので、尤度比の記載されていない診断特性に対するメタ解析を見ると残念な想いがしてしまうのです。
そこで、MetaDiScの出番です。MetaDiscもRevmanもフリーソフトですが、MetaDiscは感度、特異度、尤度比の95%信頼区間がちゃんと計算されます。また、今回の研究は4人の検者の判断を平均した値を採用している論文が含まれており、小数点以下の数値を含むデータでした。このような場合、Revmanでは解析できません(上記グラフは四捨五入して作成)。MetaDiScでは小数点以下にも対応しています。まあ、このようなことをしなければならないことは珍しいようにも思いますが。
さて、MetaDiScを使って最終的に得られた結果です。
超音波検査が陰性ならば陰性尤度比は0.08とかなり気胸を否定できますが、胸部単純写真では0.44と全然否定できない。尤度比はやっぱりわかりやすいと思うのは私だけでしょうか?