ACLS G2010では胸骨圧迫の重要度が強調され、心肺蘇生の質が大きく向上したとされる(G2015ではそこまでの大きく変更はされていない)。G2015では心肺蘇生中止基準については明記されていない。
そこで、最近の心肺蘇生法による予後予測についての最近の論文をいくつか紹介。
日本における成人院外CPAで病院到着前に自己心拍再開(ROSC)した17,238例。 2011-2012年のデータであるが、自己心拍再開した症例をこれほど多数集めるために254,975例のデータベースを用いている。
当然早くROSCした方が予後は良い。
1か月後の神経学的予後良好(CPC 1-2)を99%カバーするためには、35分のCPR時間が必要。
ただし、Asystoleの場合は42分必要。以前は20分ぐらいで目安とされていましたが、結局は時間だけで切ってはだめで、十分な可逆性原因の追及・除去をしたかどうかが大切なんだと思う。この研究のAsystoleの症例群には低体温・薬物中毒などが含まれている可能性がありますしね・・・。
J Am Heart Assoc. 2016 Mar 18;5(3):e002819
2011-2015年に目撃された非外傷性院外心肺停止27,301例。 心肺蘇生なし(no flow)≧12(11-13)分あるいは心肺蘇生(low flow)>33(29-45)分で、1か月後の生命予後が1%未満となる。二つの軸をグラフ化することで何となく理解が深まった気がする。基本的に倒れた時間が分かるならば全例でバイスタンダーCPRがされていて欲しいですが、周囲の安全が確保できなかったり老々介護で心肺蘇生術の施行困難な場合もありますから。
これは表記を変えたもの。
サブグループ解析してみると、65歳以上では18分でダメだが、若年者やVF/pulseless VTの場合は諦めてはならない。これは自分の感覚と非常に合致します。 Resuscitation. 2017 Feb;111:74-81
Termination-of-resuscitation rule
BLS TOR rule :以下の3つを満たす時 ・救急隊により目撃されていない ・病院到着前にROSCしていない ・除細動がされていない
ALS TOR rule :以下の4つを満たす時 ・目撃なし ・バイスタンダーCPRなし ・病院前ROSCなし ・除細動がされていない
2012-2013年に関東地方での集積された11,505例の院外心肺停止で検証すると、このTORルールは偽陽性が6-14%あり注意が必要。 Crit Care. 2016 Mar 1;20:49.
80歳以上の院外心肺停止で心肺蘇生を受けた377,577例。ただし2005-2015年のデータでG2010以前のCPRを含む解析。 アドレナリン使わずに自己心拍再開していれば、1か月後の生存率は30-40%。 アドレナリン使って自己心拍再開ならば10%前後の生存率。 一方、病院到着前に心拍再開していなければ1か月後の生存率は1.2-1.7%のみ。目撃なし、バイスタンダーCPRなし、除細動なしが加わればもっと低いことでしょうが、そのあたりのデータはない。 Resuscitation. 2017 Apr;113:63-69.
時間だけで切るならば40分程度の心肺蘇生時間が目安となる。
全例に「儀式」として長期蘇生をするのは大変な抵抗感があるが、TOR ruleは期待はずれであった。結局、素晴らしい画一的なルールなどというものは存在せず、症例毎に検討するしかない。 そういった意味でもCPRカンファは大事なのかな。