cracklesをその性状から水泡音や捻髪音と分けるのではなく、吸気とのタイミングで分類するほうが客観的に分類しやすい。
看護師向けレクチャーでもこの話をしていますが、実際のCracklesのタイミングを示した良い図があったので紹介。
まず心不全では吸気(図の前半部分、折れ線グラフが陰性の部分)の中央にcracklesがあります。全吸気、汎吸気といっても良いタイミングです。カルテにはpan-inspiratoryとかholo-inspiratory cracklesと書かれているかも知れません。いわゆる水泡音に相当します。これを見たら水浸しの肺、つまり心不全やベタッとした肺炎像をイメージします。
つぎに吸気の最後(終末)にだけcracklesがあるタイプ。これはlate-inspiratory cracklesとカルテに書いてあるかもしれません。いわゆる捻髪音に相当します。間質性肺炎のような間質が硬くて、吸気の最後に引き伸ばされてパリパリと音をだすイメージです(病態生理学的には違いますが)。レントゲンでは淡いスリガラス陰影などとも表現される影が多いです。
Chest. 1991 May;99(5):1076-83.
細菌性肺炎の治療過程ではベタッとした影に始まり、影が薄くなっていきます。呼吸音も肺炎のタイミングによって変わります。最初は水浸しの肺になるので吸気全体でcracklesを聴取しますが、3日後には吸気終末のみに変化しています。淡いスリガラス陰影をとりやすい非定型肺炎では初めから呼気終末のcracklesの肺炎が多いという報告もあります。また、心不全の治療過程でも吸気終末のcracklesに変化することはよくあります。
Chest. 1992 Jul;102(1):176-83.
最後に吸気の早期にだけcracklesを聴取する場合は、COPD(肺気腫)を考えます。肺気腫では息を吐ききれず、末梢気道が呼気の最後に閉塞してしまいます。その閉塞した末梢気道は吸気の最初に開くため、これが吸気の早期のcrackles(Early-inspiratory crackles)として聞こえるわけです。この音は口元に放散するのも特徴ですので、マイクをあてるかのように、患者さんの口元に聴診器をあてて聴診するとよいとされます。
Chest. 1991 May;99(5):1076-83.
これらの事は以下の本にも解説していますので、興味ある方はご覧ください。