頭痛の鑑別診断は膨大であり、診療も一筋縄ではいきません(「国際頭痛分類 第3版beta版」では頭痛を大きく14項目に分類、その下位に286項目、付録を含め339項目が掲載されています)。本特集では、効率よく頭痛について学ぶことができるよう、遭遇頻度の高い疾患にフォーカス、知っておくべき知識や技術・ピットフォール等の臨床的な重要ポイントを、プライマリ・ケア目線でまとめました。
今回は高岸先生とコラボして企画。枠組みは私が担当しましたが、総論をお願いしました。そして勉強の仕方を座談会として収録いたしました。また当院の長野先生にも片頭痛の治療の項目について解説してもらいました。それ以外の項目も素晴らしい執筆者に恵まれました。是非ご覧ください。
私は薬剤乱用頭痛を取り上げましたが、結局、コラムが増えてコラムも6つ書かせて頂きました。
▼総論 頭痛患者へのアプローチ|高岸勝繁 ▼二大頭痛を深めよう これが片頭痛だ! これも片頭痛か?|成瀬玉惠・立岡良久 片頭痛はこうやって治療しろ! |長野広之 緊張型頭痛を解きほぐす|今井昇 ▼知っておくべき頭痛たち 泣いてしまう頭痛|土肥栄祐 これでもう怖くない雷鳴頭痛|竹内俊輔・林寛之 頭痛と腰椎穿刺の切っても切れない仲|立花久大 原因は頭の中とは限らない|高岸勝繁 ビリッときたらこの頭痛|片多 史明 毎日痛いからなんとかして|上田剛士 ▼コラム「頭痛小咄」 1頭痛がないのに片頭痛! ?|高岸勝繁 2入院後に頭痛が起こったら|上田剛士 3泣く子も黙る?インドメタシン反応性頭痛|上田剛士 4頭痛を伴うアナフィラキシーを見たら|上田剛士 5死角からの刺客|上田剛士 6その頭痛は二日酔いではないかもしれない|上田剛士 7早朝の頭痛は脳腫瘍か?|上田剛士 ▼ゲストライブ The 勉強談義! |高岸勝繁×上田剛士
インドメタシン反応性頭痛についてだけ、紹介させて頂きます。
片側頭痛におけるインドメタシンの効果は絶対的であるとされており、国際頭痛分類第3版beta版の診断基準にも「治療量のインドメタシンで完全寛解する」と明記されています。
少し込み入った話となりますがインドメタシンの使用量には注意が必要です。国際頭痛分類第3版beta版では成人において経口インドメタシンは最低用量 150 mg/日を初期投与量として使用し、必要があれば 225 mg/日を上限に増量するとされています。一方、わが国ではインドメタシン経口薬の使用量は最高量 75mg/日まで,直腸投与(坐薬)は最高量 100 mg/日までとされています。日常臨床では 75 mg/日までの投与で反応性を判断してよいと考えられますが,75 mg/日のインドメタシンが無効の場合は臨床所見を勘案しながら総合的に判断する必要があります。
またインドメタシンが有用と考えられる頭痛にはValsalva手技で誘発する頭痛(一次性咳嗽性頭痛、一次性運動時頭痛、性行為に伴う一次性頭痛)があります。インドメタシンは脳血管収縮のためか頭蓋内圧を下げることが知られており1、この効果はNSAIDsの中でもインドメタシンに特徴的なようです。
一次性穿刺様頭痛、睡眠時頭痛もインドメタシンが有効ですが、治療が必要となることは少なく、睡眠時頭痛ではリチウムやカフェインも有効とされます。群発頭痛や貨幣状頭痛もインドメタシンが有効という症例報告はありますが、積極的に使用する根拠は乏しいです。
流涙を認める頭痛(片側頭痛)と大泣きすることで起こる頭痛(Valsalva手技で誘発する頭痛)に対してはインドメタシンが有効と覚えてはいかがでしょうか。
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私の連載:I LOVE Urinalysisは「尿糖は本当に甘い?」でした。
Diabetes mellitusのDiabetesとはサイフォン、素通りするという意味です。diarrhea(下痢)やdialysis(透析)にも語源が通じ、多尿の状態を表現しています。そして“mellitus”というのはsweet[甘い]の意味です。なお“insipidus”とはtasteless[無味]という意味です。つまり多尿があれば、尿の味をみて、甘ければ糖尿病、無味ならば尿崩症(Diabetes inspidus)と診断できるわけです。古の医師は大変ですね・・・。
おおよそ血糖≧180で尿糖陽性となりますが、糖尿病がないのに尿糖陽性となる病態に、胃切除後、甲状腺機能亢進症、腎性糖尿、SGLUT2阻害薬服用、妊婦があります。
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