拙書「日常診療に潜むクスリのリスク: 臨床医のための薬物有害反応の知識」の韓国語翻訳が半年の期間を経て、発売されたという報告を受けました。
なぜ韓国版が出たかという話は個人的推測ですが、別に記載してあります。
日本語版よりもA4判と大きく、かつハードカバー。値段は3500円相当の様子。
いまなら10%引きで購入できるようですが、内容見ても私には全く分からない。韓国語が母国語の方のお役に立てることを祈っています。
韓国版の表紙はクスリの光と影をイメージして作成されています。
もともとの私の原案は全体をダーク色にまとめて中央に大きく天使と悪魔でした。
日本語版もそのイメージが残っていますが、最終版では天使と悪魔というデザインは言わないと気づかれない程度に小さくしました。むしろそれよりも光輝く明るいイメージとすることを優先しました。
韓国では医療費削減に関心が高く、クスリの副作用についてもおそらく日本よりも高い意識をもっているようです。日本の現状は楽観視できる状況ではありませんが、薬害は悪意をもって生じるものはなに一つないことが大事です(と信じたい)。私は感冒に抗菌薬を出すことは患者さんが希望しても行いません。それは国家資格を与えられし番人としての仕事を放棄することになるという考えからです。しかし検査がすぐにできない環境では感冒と思っても肺炎を除外しきれず処方することはありえると思いますし、私に抗菌薬処方を断られた患者さんがかかりつけの先生に泣きついたら、今までの人間関係を反故にしてまで処方を拒むことは難しいことも容易に理解できます。そこで「誰が処方したから」「あそこであんな薬処方されたせいだ」「処方薬を勝手に一時中止・変更された」などという小さな言い争いはやめて、すべての医師が薬害に関心をもち、常にベストの治療とはなにかを考え、患者と共に学んでいく姿勢を育みたいと思っています。そうすれば日本語版の表紙をイメージさせた明るい未来が開けるのではないかと思っています。
丸太町病院では緊急受診する方が多いので、普段の薬剤を変更することが多々あります。それはその急性期には必要がないあるいは有害な可能性がある薬剤と判断されたためです。投薬変更は前医の処方内容を非難するものでは決してないと思っています。むしろ、急性期の状態に即して代謝の低下、せん妄・転倒リスク増大、新たな薬物との相互作用、嚥下機能低下などから投薬を変更することは当然のように思いますが、不要な誤解を受けることがあります。そこで、最近、急性期を脱した後はかかりつけ医の診療により再度投薬調節を受ける必要があるという説明をパンフレットにしました。病院勤務医・かかりつけ医・患者の三者がよりよい方向に歩む手助けになればよいのですが。