鳥越医院学術研究会
総合診断対決 ヒト VS マシン ヒト代表 安田英己先生 中西重清先生
座長 鳥越医院 理事長 鳥越恵治郎先生
私が学生の頃からある 「病名思い出しツール」 を作り上げた鳥越先生が企画された勉強会です。
AI3台を用いて、同じ症例をヒトと共に診断していく企画です。 「病名思い出しツール」は中学生が用いて和歌山毒物カレー事件が亜ヒ酸中毒であることをあてたソフトです。
症例提示 1. 上田剛士先生 私は全体の流れを大事にする症例を提示しました。 疾患治療中の病態変化は、原病の診断が間違っていたか再燃/併発症の可能性、あるいは治療にともなう合併症/薬剤副作用を考える。 こういったイメージはAIではまだあまりできないのではないか、と考えて提示しました。 AIは診断できず、数人からドンピシャの正解が出たため、ヒトの勝ちでよかったと思います。
2.志水太郎先生 AIとは対決ではなくAugmentation。 生来健康の58歳女性 8カ月の湿性?咳嗽 なお、AI側としては”慢性”など期間をデータ化するのが難しいとのこと。 右肺野にWheeze。ほてりちょっとあり。
→ 気管支カルチノイド腫瘍
AIは69番目の診断に上げていました。
3.徳田安春先生 「病名思い出しツール」を検証した結果、ヒトは多数の難しい症例を解き続けると効率が落ちるが、マシンは落ちない。 47歳女性 4日前からの腹部他覚所見の乏しい腹部全体痛、90/50 160reg。38℃台 最初は間欠痛で軟便・泥状便伴うが、持続痛となっている。 最終月経1W前。
私の鑑別:
腹部他覚所見乏しい腹部全体痛であり、たとえ仙痛で始まっていたとしても消化管疾患以外を疑う。ショック+下痢と考えると副腎不全、糖尿病性ケトアシドーシス、甲状腺クリーゼ、アナフィラキシー、薬物副作用、トキシック症候群あたりをまずは想起。ここで発熱あること、薬剤歴ないことからアナフィラキシー、薬物副作用は否定的。トキシック症候群としては腹痛が高度すぎるが私ならタンポン使用歴は確認するだろう。糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)としては呼吸数落ち着いておりSpO2も不自然に高いわけでもない。DKA+肺炎/心不全ならば説明可能であるが、頻脈が高度すぎるだろう。バイタルサインだけみれば非ケトン性高浸透圧性昏睡のほうがしっくりくるが、その場合は腹痛は高度とはなりがたい。そのため口渇・多飲・意識障害に加え、血糖は確認したいが鑑別の上位とは言い難い。
病歴と身体所見からは甲状腺機能亢進症がもっとも考えやすい。ただし暑がり・振戦・甲状腺腫はないことは非典型的である。甲状腺機能がすぐに判明しないような状況下であればβ拮抗薬での対症療法を始めるだろう。
血圧はもともと低めとのことで、副腎不全としては血圧低下より頻脈が高度なのがバランス合わない。提示されていた好中球優位の白血球増多やNa.K正常なのも副腎不全とは合致しないが、臨床的に否定しきれないため、私ならばRapid ACTHを行いステロイド補充も行うであろう。ということで本命:甲状腺クリーゼ、対抗馬:副腎不全で鑑別にあげました。フロアからは心筋炎による腹痛も鑑別にあがるとの指摘が。確かに。
検査結果は異常あるものは以下のとおり。
Cr 3.1 cCa 12.6 15900>13.0<300 LFT:nl CPK nl U/A:nl UCG:Hyperdynamicで心筋炎疑う所見はない
→結局甲状腺クリーゼが正解でした。 高Ca血症は多因子だが骨代謝亢進などによると考えられました。
やはり病歴とバイタルサインが診断のカギであると思いました。一般検査結果を見る前と鑑別があまり変わりません。
追加症例:
Deep learningは画像所見などに応用されていくだろう 例:右大腿前面のみの小丘疹。毛嚢一致。Cork screw。 →ビタミンC欠乏(Meat Egg Cheeseダイエットによる) 片側性も多いことは知らなかった。