國松 淳和 先生から献本頂きました。
自己炎症性疾患はとっつきにくいと感じている人も多いと思いますが、かなりの患者数がいることが推測されています。
特に家族性地中海熱は、家族性や地中海という言葉で、医者も患者も自分たちには関係がないと思いがちな疾患ですが、よく(?)遭遇します。丸太町病院は150床の小病院で、特に自己炎症性疾患、不明熱を中心に診療している病院ではありませんが、それでも何例も診断しています。
この家族性地中海熱について特に詳しく、実臨床に生きる記載が詳細にされているのが本書です。
くりかえす腹痛で虫垂炎や胆嚢炎と考えられ手術歴のある患者、繰り返す腹痛で消化器科で長期通院歴ある患者、繰り返すPIDと考えられていた症例、子宮内膜症と考えられていた症例、PFAPA症候群との異同が議論ある症例など、当院で経験した症例と同様のエピソードが記載されています(もちろんそれだけにとどまらない)。家族性地中海熱(FMF)の診療に慣れていない人ならば、一度読めばかなり家族性地中海熱のゲシュタルトを得ることができると思います。
次に、家族性地中海熱の主たる治療であるコルヒチンの使用方法について詳細が記述されていることが素晴らしいです。0.5㎎/日と少量で寛解に至るケースもありましたが、1.5㎎/日を超えてもコントロールできず消化管症状や肝障害、血球減少が問題となるケースが多々ありました。そのような場合、半錠づつ分割投与したり、軽度の肝障害は経過を見れば良いなどの対処法が紹介されています。
それ以外の自己炎症性疾患についても詳しくもあり、かつ分かりやすい記述がされています。どのような症候があれば、自己免疫疾患の中では〇〇を考える、という内容は各疾患の縦糸を結ぶ横糸的知識で、頭の中で各疾患の整理ができ、自己炎症性疾患を一通り勉強したことがある人にとっても読みごたえのある内容だと思います。
個人的には、”家族性地中海熱と「+α」”の章が勉強になり、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)と家族性地中海熱を同時に鑑別にあげることはあまりない、ということがとても同意できました。
いずれにせよ、繰り返す発熱を診る機会のある人は必読と思います。