日本在宅医学会第20回記念大会@グランドプリンスホテル新高輪
に参加しました。
講演は「シンポジウム:他領域から学ぶ論文と臨床の融合」で
座長は
茅根 義和 先生 (東芝病院 緩和ケア科) 山中 崇 先生(東京大学医学部 在宅医療学拠点) でした。
まずは浜野 淳先生が「緩和医療領域から学ぶ論文と臨床の融合」を話しました。
PMID:29038236 オキシコドンにノバミンは必須ではない。制吐作用は有意差なく、眠気だけは有意に増加した。だからルーチンにノバミンを併用することは必須ではないかも知れない。
PMID:2888769 死亡確認で以下の5項目を注意するとよいかも知れない。
1)家族の感情が落ち着くまで少しまつ
2)自己紹介をし、主治医から申し送りを受けていることを伝える
3)患者さんに声掛けをしてから診察し、診察後に服や布団をもとにただす
4)時間確認は携帯電話ではなく、腕時計で
5)苦しくはなかったと推測されることを伝える。
次に岩田 健太郎先生が「演繹法と帰納法」を話しました。
スライドなしでの完璧な講演で、いつもながらスゴイ人だと感心します。
演繹法の例として梅毒の治療薬の開発にまつわる話を紹介。原因同定して、理論的に効くはずだという理屈で攻める方法。結果としてヒ素毒で実用に耐えなかったという結論に達しうる弱点があった。机上の空論となりうる。
脚気の原因推測も集団発生から集団感染を疑う演繹法も用いられていたが、一方で最終的に原因同定に至ったのは麦を食べさせれば脚気は起こらないという帰納法が有用であった。つまりEBMと考えると分かりやすい。
そこで、Abductionという方法の紹介。これは断片的知識から、仮説によって全体像を導く方法。若い女性に妊娠の可能性はありますか?と聞くと「多分ないと思う」と返事があった場合、それは妊娠の可能性はないのではなく、むしろ妊娠を否定できないという意味である。他に何かないですか?と伝えた後に「ないですけど・・」は言いたいことがあるという意味。Case reportで報告があるというのは非常に稀であることの裏返し。思えばこの議論はよく我々のカンファレンスで話す内容と重なります。abductionというんですね。
私は「総合診療における論文と臨床の融合」という話をしました。
私の話は簡単で、目の前の臨床的疑問を解決することが大切で、これをしっかりすれば患者さんの笑顔を生み出すことができ、そのことで我々も幸せになれる。臨床で論文を読み続けるのはそれが第1の動機であるべきだ。という話です。PubMed検索の方法を話した時に初めてメモを取っている人がいたので、検索方法をもう少し話せばよかったですかね・・・。
4000人近くが参加した学会で、懇親会の盛大さは驚きました。
この学会では往診医や訪問看護師らだけではなく、市民、勤務医、行政とも連携をとっていく姿勢が強く、大きな視点をもっている学会と感心しました。
京都でもっと在宅診療を進めるには我々勤務医が在宅に関する理解を深めることが必須だと思います。