今週5日間にわたって早朝のラジオに出演致します。
テーマは「めまいがあった時に、疑うべき病気」でご依頼頂きましたが、めまいは困っている人が多いため、総合診療科でもよく相談されます。
メモ書きから紹介するので、多少放送内容と異なる可能性があることを
1日目「末梢性めまい」
「良性発作性頭位めまい」と「メニエール病」「前庭神経炎」を取り扱いました。
良性発作性頭位めまいは頭位であり、立位や頸位ではないことを確認します。つまり立ちあがった時に起こるのは立ち眩みで、寝返りでおこるのが良性発作性頭位めまいという感じです。耳の奥の小さな石が動くのが原因なので、じっとしていれば30秒ほどで止まるのが典型的です。治療はめまい運動です。
「メニエール病」は耳の中に蕁麻疹が起こっているようなもので、20分~24時間持続します。耳鳴りや難聴があるのも特徴です。(確か収録では話しませんでしたが、メニエール症候群という広い概念もありますが、医者同志での会話でメニエールと言えばどちらかと言えばまれな病気であるメニエール病を意味します)
「前庭神経炎」のめまいはおおよそ48時間以内に改善するが、耳鳴や難聴を伴わないのが特徴。治療は幻暈止めですが、順応を妨げるので最小限にとどめ、リハビリが大切です。また基本的に跛繰り返さないので予防薬は不要です。
2日目「中枢性めまい」
これはまだ未放送だと思います。
頭痛/頸部痛、しゃべりにくい、飲み込みにくい、物が二重に見える、手足や顔がしびれるという症状がある場合に考えます。
歩くことが全くできない場合も要注意です。
その他に脳腫瘍(聴神経腫瘍)によるめまいは、多くは徐々に進行し、難聴が目立つことが多いです。
あとは片頭痛患者におこる、多くは頭痛発作に伴って繰り返すめまいについて触れました。
ここまではそれぞれ耳鼻科と神経内科の先生が専門になると思いますが、めまいで原因不明とされ総合診療にかかられる方は他のめまいも結構あります。
3日目「『起立性低血圧によるめまい』と『首のこりによるめまい』」
「起立性低血圧によるめまい」これは「貧血」と表現されることもありますが医学的には正しい用語ではありません。貧血は血液が薄くなることを指し、動いたときの動悸・息切れが起こりやすいですが、起立性低血圧ではふわーとして意識を失いそうになります。
「首のこり」によるめまい
パソコンやスマートフォンを使うなど目や腕を使うと、首のこりや痛みがおこり、このことで頸の神経が緊張し、頸の神経と、平衡感覚に関係している耳の神経(前庭神経)が混線して平衡感覚が乱れ、めまいにつながるという考えがあります。検査で診断することは難しいため、原因不明とされることも多いですが、実際にはよくあります。
原因の除去が最も大事で、肩こりに対して適度な運動やストレッチなどを行うことで楽になります。
4日目「心因性めまい」
パニック障害や過換気症候群も含む不安障害のイメージがあるかも知れませんが、不安が強いだけで起こるめまいもあります。不安のない人生を歩むことはないでしょうから、どなたでもこのようなめまいが起こる可能性があります。このようなめまいが起こりやすいのは、転倒して骨折してしまった後、脳血管障害を起こした後、体力に自信のない高齢者、などです。
高所恐怖症の人は、高いところに行くと、不安感が増し、足下がぐらぐらする。
これは、体が過剰に調整しようとする行動。体がちょっとでも右に振れると怖いので左に戻そうとする、逆にちょっとでも左に振れると右に戻す。このような過剰な調整をすると常に細かく揺れていることになるので、でかえってグラグラしてしまいます。
もう一つは乗り物酔いに似ている面もあり、目からの信号と、身体の姿勢を感じ取っている深部感覚とが一致しないとめまいとして感じる。だから車の中で本を読むと酔う。運転していれば酔わない。めまいが心配で深部感覚に過剰に頼っているめまい(持続性知覚性姿勢誘発めまい)では同じ理由でめまいが生じます。
足元を見ずに遠くを見て歩く。自信を持つことが大切。例えばご高齢になると、筋力低下、平衡感覚低下など様々なものがふらつきに関係してきます。それらを過剰に心配して歩行しないと廃用症候群で悪循環に陥る。むしろ積極的に歩いていくことで筋力も平衡感覚も鍛えられていき、そのことで不安が消えていくという良い循環が生まれます。またこのような運動は肩こりやストレス発散にもつながります。
つまり、めまいがあるからこそ、積極的に歩いて運動して、健康的な生活を心がけて頂きたいと思います。
5日目「医師にかかるときのポイント」
1-4日目の内容を総括してお話しました。
普段、めまいと言えば末梢性めまいと中枢性めまいの話が定番だと思いますが、これらの疾患は自分で治すことはできません。
また末梢性めまいは繰り返さない限り短期間で改善しますので診断がつかなくてもさほど困りません。
そこで、長い期間悩むめまい、原因が不明とされるめまいとして、また自分で予防が可能だったり治療が可能な可能性がある「頸性めまい」「心因性めまい」を今回は思い切って詳しく話しました。
めまいがあるからといって引きこもったりせずに、むしろ運動したり健康的な生活を送ることにつながるような話としたつもりですので、興味がある方はお聞きくだされば嬉しいです。