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第 1 回 京都在宅医療塾Ⅰ~探究編~での質疑応答

京都府医師会館にて8月5日に行われた講演会は時間いっぱいまで講演させて頂いたため、質疑応答の時間がありませんでした。ご質問を用紙に書いて頂き、後日回答させて頂く方針としておりましたが、本日ご質問の集計を頂きましたので、ここに報告いたします。

【ご質問①】

体温の測定は、腋窩で充分なのでしょうか。

体温が低いと訴える人に対しては、口腔内測定が必要でしょうか。

【回答】

ご質問有難うございます。

ご指摘の通り口腔内測定が有用な可能性がございます。

健常者の腋窩温は平均36.3℃で95%信頼区間は35.6~37.2℃という報告があります。そのため35℃台の平熱は驚くことはありません。その一方で、腋窩温は外環境や発汗、皮膚との接触具合の影響を受けるため信頼性が低いことが指摘されております。よくある患者さんの誤解としては今まで測定された中で最も低い体温を平熱と理解している場合です。つまり、発汗で体表が冷えていたり、接触が悪く腋窩温が低く測定された場合、それを平熱として記憶していると正確に測定された体温を平熱より高い=発熱であるという認識をしてしまう誤解です。一方、常に同じ条件で測定された体温が変化したならばそれは体温異常とみなしてよいと思います。

腋窩温の信頼性の担保は難しいですが、客観的な記録が存在しているか、測定する時間帯はいつか、運動や食事の影響を受けている可能性はどうか、腋窩温の左右差はあるか、医療機関での測定値との乖離などから判断しています。

当院では衛生上の問題から口腔温は測定しておりませんが、患者指導としてご自身の体温計で測定する場合は信頼性の高い口腔内で測定するのは理にかなっており、良い方法であると思います。当院では腋窩温の信頼性が疑われた場合には鼓膜温、膀胱温、直腸温を状況に合わせて測定しております。蛇足ですが、口腔温のほうが腋窩温より0.2℃ほど高いとされ(報告によって異なりますが)、両者を混同して評価しないように注意が必要とは思われます。

【ご質問②】

熱中症かと思っても、頭痛と嘔吐が見られるとクモ膜下出血の除外が必要かと思い

病院に搬送しています。

病院では、必ずCTを撮られているのでしょうか。

【回答】

クモ膜下出血の除外は重要ですので、大変教育的なご質問に感謝いたします。

頭痛や嘔吐を伴う熱中症疑いでは髄膜炎やクモ膜下出血、それ以外の脳血管障害、心筋梗塞など様々な疾患を除外する必要があります。

当院では全例CTを施行するというプロトコールは存在していませんが、患者背景、頭痛の発症様式や程度、血圧、意識障害の有無、内科的疾患が起こり倒れた後に熱中症が起こった可能性がどれほどある病歴なのか、などを総合的に判断してCTや髄液検査などを行うかどうかを判断しています。

ただし現実的な問題として頭痛に加え嘔吐も伴っていれば頭蓋内疾患を危惧する症例が大半であると思いますので、ほとんどの症例でCT検査を行うのではないかと思います。

【質問③】

頚静脈圧について

〇内頚静脈をみる時は、拍動のあるところをチェックして頸静脈圧を測定しますが

 外頸静脈のように怒張して血管がはって見えることがあるか教えてください。

〇もし、内頚静脈がはってみえるなら、拍動ではなくて

 はっている一番上を測定してもよろしいでしょうか。

【回答】

ご質問有難うございます。

内頚静脈の拍動が見えなくなるほど怒張すると、どこに内頚静脈が存在するかの判断が困難です。また頸静脈圧の判断では拍動している頸静脈を観察することが重要と考えています。特に外頚静脈は筋肉を迂回するような走行をしておりますので、首の角度などによっては筋肉に押されて閉塞し、その遠位が怒張してみえることがあります。この場合、遠位の外頚静脈の拍動は消失しておりますが、拍動が消失しているということは心臓の圧が伝わっていない=心臓の圧を反映していないということになります。

そこで私は左右どちらでもよいし、内頚静脈でも外頚静脈でも構いませんが、二峰性の静脈拍動を確認できるところで頸静脈圧を評価するようにしています(頸静脈圧の評価に大切なのは拍動をみやすい首の角度とギャッジアップの角度の調節ではないかと思います)。心不全の方で練習すると比較的容易に修練が可能ですが、痩せているCOPD患者でも見えやすい方が多いように思います。

拍動が見えない場合、圧が低いのか頸静脈が見えにくいのか分からないので近位部を圧迫したり(下動画では外頚静脈の近位部を圧迫している)、腹部圧迫で一時的に静脈圧をあげて頸静脈を同定する方法は有用と思います。

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