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「長引く咳」を診断するためのエビデンス


日本医事新報(4920) 特集長引く咳はこう診る
に記事が掲載されました。
監修:亀井三博(亀井内科呼吸器科院長)
■監修のことば

開業して20年余,いまだに,長引く咳をクリアカットに診断するのは難しい,と感じている。それはまるで,アルプスに連なる山々のようで,おぼろげな霧の彼方に霞む山頂=咳の正体に,何の準備もなく到達するのは至難の業であり,道に迷い遭難し,患者を路頭に迷わせること,必至である。山に登るには優秀な山岳ガイドが必要である。今回,臨床家として尊敬し,その診断力を麓から憧れながら仰ぎ見る皆様にお力を借り,読者諸氏のガイドをして頂くこととした。できあがった原稿を拝読し,長引く咳という難攻不落の山に挑むに最適の登山地図ができたと確信している。明日からこれを手に,日々の診察にあたって頂きたいと願う次第である。

私の担当は

「長引く咳」を診断するためのエビデンス

でした。

なかなか広い範囲ですので、基本的な事から説明させて頂きました。

  • まずは喫煙者には禁煙させること。安易にSmoker's coughと診断してしまうと、レントゲン写真では見つけられない肺癌を落とすことになりますので、健康のためだけではなく診断のためにも禁煙指導は必須です。

  • 3週間未満の持続ならば気道感染を第1に考えます。3週間以上の遷延性咳嗽となると咳喘息、上気道咳嗽症候群、逆流性食道炎が増えてきますので改善傾向かどうかが大切です。8週間以上は慢性咳嗽とされます。

  • 咳喘息はアトピー咳嗽という亜型があり、また海外では好酸球性食道炎という概念が用いられます。気道過敏性を調べるのは容易ではないため臨床的に区別するのは困難なことも多く、咳喘息類縁疾患としてまとめてしまうのも一つの方法と思います。

  • 咳喘息(類縁疾患)は誘発因子を確認することが大切で、身体所見では強制呼気でのWheeze、検査ではβ刺激薬への反応、FeNOが大切。ただしアトピー咳嗽の場合は診察所見、呼吸機能検査、FeNOで異常値が得られ難く、疑われれば吸入ステロイドを試すのが現実的。

  • 上気道咳嗽症候群は後鼻漏と似たような概念。日本では副鼻腔気管支症候群という概念もありますが、慢性の好中球性炎症による疾患であり鼻症状や副鼻腔炎の画像所見があるからといって数週間の経過で安易に診断すべきではないと考えます。

  • 逆流性食道炎は食事、食後の体位、嗄声が大切。呼気終末に咳がでるDeflation coughが診断に有用という報告がある。PPIの効果は限局的であり生活指導を同時にしっかり行うべきである。

ちょっとトリビアとして鎮咳効果のある薬物としてハチミツを紹介しています。また慢性咳嗽の原因にビタミンB12欠乏がありますが、喉頭感覚過敏が関与しているそうです。ガバペンチンが慢性咳嗽に有用という報告が増えてきていることと合わせて記憶しておくとよいでしょう。

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