薬剤部にお願いをして今度はインスリン製剤の使い分けを実践しました。
注:勉強会に関する個人的な感想なのでどの製品がよいかを決めるものでは決してありません。
最近の新規採用製剤について
・ ヒューマログミリオペンにHDが追加販売されています。これは0.5単位刻みで投薬できるということでHalf doseという意味です。
・ランタスXR注ソロスターは3倍濃度とし持続時間が28時間に延長した製品。薬価は2933円と高くなっていますが1本450単位であり、もともとのランタスとほぼ同じということで当院ではこちらに置き換わっています。一方、インスリングラルギンBSミリオペンは元祖ランタスのバイオシミラーですが1本1481円とかなり安いのでこちらも院内採用です。ちなみに超即効型はサノフィ、リリー、ノボ各社がすでに製品を出しているのでわざわざバイオシミラーを販売することはないのではないかと思います。インスリン製剤が安くなると助かる人は多いのですが・・。
・ライゾデグ配合注フレックスタッチはノボラピッド3:トレシーバ7の持効型含有の混合製剤で。
プレフィルド製剤の違いについては
サノフィ社のソロスターは10秒かかる。同じ14単位を試しに売ってみると他の製品(5-6秒)のほうが確かに早く薬剤放出されました。ちなみに写真は注入補助具としての拡大鏡をつける前後の写真を載せます。
イーライリリー社のミリオペンはコンパクト。目盛りの色が澄明で見にくい。注入時の感覚が一番重いように感じました。
ノボ社のフレックスペンは標準的な印象。
フレックスペンもそれなりに柔らかいが、同じくノボ社のフレックスタッチは太めで握りやすく注入時の力が非常にかるく済む。注入終了時にカチッとなる。ダイヤル式のイノレットも高齢者などで昔よくお世話になったが、ノボ社は使いやすい製品の開発に優れているようですね。
患者指導について
・押したまま抜く事。そうしないと血液が逆流することがある。
・穿刺部位を毎回2-3㎝ずらす。同じ場所にうっているとインスリンボールができる。ここに注射を打つとインスリンが吸収される前に皮下で分解され効果減弱する恐れがある。
・穿刺部位と血中濃度ピークまでの時間は腹部1.5時間、殿部1.6時間、上腕1.7時間、大腿3.0時間だそうで、穿刺する「領域」は固定する必要がある。大腿かそれ以外かが特に重要ということですね。
・針の蓋をRecapして外すため他人が使った針で針刺ししないように院内ではどの施設でも一般的に用いていると思われるリムーバーですが、意外に医師はこういうのに疎い人もいるので良い勉強になりました(正式名称はペンニードルリムーバーIIというそうです。下写真は針の上にかぶせた状態です)。
インスリン注入補助具について
上の写真のように拡大鏡は各社そろっている(イノレットはもともと不要なほど見やすいので拡大鏡はない)。
滑り止めはソロスター、ミリオペン、フレックスペンで揃っている(上が通常の状態で下が滑り止め装着時)。
一方、フレックスタッチは注入単位が増えても伸びることがないため、滑り止めは容易されていない。下の写真は試しにフレックスペンを60単位に設定した場合は一番下のように非常に長くなるが、フレックスタッチでは80単位に設定しても全く伸びないことがわかる。
一方、フレックスタッチは手指が不自由でもダイヤルが回せるように補助具(下写真の上のフレックスタッチのお尻部分に装着)がある。ただこれをつけなければならないならば、針の脱着もできないのでは?という疑問が上がった。どうなんでしょうね。
他の補助具にイノレット専用の過剰投与を防ぐトマレットや片手操作可能なカタレットがあるので、次回は試してみたい。脳卒中や関節リウマチで困っている患者さんが当院は多いので。
カートリッジ製剤について
残念ながら当院不採用ですが薬価が安い。今回はサノフィ社のイタンゴ(黒色)とノボ社のノボペン4(青色)をみせてもらいました。特にイタンゴはスタイリッシュですが、見た目から診察用の懐中電灯と間違えている輩がいました。
混合インスリン
今迄の製剤は中間型を使用しているので白濁しています(下図)。こすり合わせるように10回、さらに10回振ってから使用しなければなりません。一方、新しい混合インスリンであるライゾデグ配合注フレックスタッチは持効型製剤配合でありプロタミンを使っているわけではないので白濁していないし振らなくてよい。
GLP-1製剤
ビクトーザはノボ社でありフレックスペンと全く同じ。
トルリシティ皮下注(ディラグルチド)は週1回で良いことから、アドヒアランスが問題となる場合などに期待されますが、週3462円、年間18万円かかります。ビクトーザも用量次第ですが同程度かかります。ちなみにランタスXR注20単位/日は年間5万6千、インスリングラルギンBSなら4万1500円程度です(空打ち分や廃棄分含む)ので結構な違いです。トルリシティ皮下注は週に1回だけでよいので使い捨てオートインジェクターというかっこいい(使いやすく安全な)システムを用いています。これは近未来的ですねー。