自分としては困難な講演依頼の部類でした。エビデンスというよりは経験を要する分野だからです。自分はまだ経験が足らず、自信をもって話すことはできませんが、精神科の先生の意見を聞けるチャンスだったのでご依頼を受けて講演しました。
予想どおり学びの多い会となりました。
1. 自分の行っている診療方針について精神科/心療内科の先生方よりお墨付をもらえた
2. 精神科の先生は私が行っている身体診察に同意をしたものの、普段は用いていない。
・診察室でのため息は心理社会的背景を探れ
・大脳辺縁系の働きを反映する瞬時の表情を見落とすな
・なだめ行動があればストレスを反映する。何か言いたいことのサインかも知れない
3. Hoover徴候などの身体所見はDSM-5にも反映されており、これらの診察ができなければConversion disorder/転換性障害の確定診断はできないので精神科医としても大切
4. 期外収縮の患者さんに私も期外収縮ぐらいありますよ、というと反感を買うことがあるので注意。共感しても自分の話はするな。
5. ストレスのせいですね、とは言ってはならない。ストレスは誰にでもあるので、ストレスを感じているのは精神科/心療内科への紹介の導入に使うことは便利と思っていましたが、説明には注意が必要なようです。ストレスにとらわれ、ストレスにこだわると、何もできない生活に移行してしまったりします。またストレスを感じていない人も多いわけで、転換性障害の診断基準からもストレスの項目が外されたそうです。
説明って本当に難しいですね。この辺りはどのように言うべきかいつも悩むので自分の普段の説明をありのまま提示して会場からの反応を見てみました。質疑応答でも、どのように説明すべきかの質問がでました。
愁訴が多い場合、どのように対応するのがよいのか。→ 色々検査するよりもいろいろと話を聞く方が最終的には早く正しい診断に至るため、私は話を聞く方を選択している。
救急外来で忙しいときはどうするのか? → 常連さんであれば「何年も悩んでいる症状を、私が今日1日で全て解決することができるとは思えない。でも一つだけならばなんとかなるかも知れないので、最も困っている症状を一つだけ教えてください」と言えば、お互いに診療の目標が明確化する。
オープンエンドクエスチョンで聴くのか? →最初にどれだけ語らせても数分で話が止まるのが多い。最初からClosedだと重要なキーワードを聴きだすことができないリスクを背負うため、オープンエンドクエスチョンで始めるべきと考える。
研修医でまだ自信がなく、患者から不信がられる。→これは私にも同じことが言える。すべてが一目で診断がつくはずがない。「私にできる範囲で一生懸命考えますから、貴方には一生懸命症状を教えて欲しい」とお願いするしかない。
心理士の先生とも少し話せませた。懇談会があったら色々聞いてみたかったですが時間がなく残念です。
精神科や心療内科のない丸太町病院で働く身としては大変貴重な経験になりました。