その通り!と思うことがぎっしり詰まったエビデンス本です。
躊躇することなく気持ちよいほどズバズバと切り込んでいく内容は痛快です。
Lesson 1 認知症診断の原理原則
「認知症」という診断名は存在しない。アルツハイマー病という診断が不自然に増加し不適切処方が増えていることを懸念。
薬剤起因性老年症候群は本当に多い。抗ヒ、SSRI、抗パ薬(抗コリン薬)、過活動性膀胱治療薬、H2遮断薬、ベンゾ。
変性疾患の病型分類は病理診断に基づくと臨床診断がいかに困難か。生きている間はだれも確定診断できません。
Lesson 2 画像診断の意義と限界
VSRADは研究目的。再現性に問題あり。「Not for diagnosis」
治療方針が変わらないなら検査するな
ADかDLBに核医学検査は原則不要だが、するならMIBGシンチ、心疾患などあればDATシンチ検討
Lesson 3 抗認知症薬
抗認知症薬は使わないのが原則
使うなら安いドネペジル。薬効での使い分けに意味はない
少量投与無意味のエビデンスあり。承認用量も治験で失敗している。定期的な評価を行い無効ならば中止
ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンは国内治験でプラセボと同等なので使わないのが基本
DLBに対するアリセプトも第Ⅲ相試験で失敗。
認知症の9割以上で抗認知症薬は無意味
メマンチンが精神症状はプラセボと同等。
Lesson 4 精神症状への対応
まずは断酒。節酒じゃない。
徹底的に減薬。これに関してはだいたい医者が悪い。
BPSDに抗認知薬は有効性期待できない。
メマンチンもメタ解析で有効性否定。
指摘しない、注意しない、性格のせいにしない、妄想対象を責めない、頭ごなしに否定しない。
Lesson 5 医療者ができること
MMSEとHDSRの施行の仕方
個人的には、ここがとても勉強になりました。
MMSEと異なりHDS-Rの場所の確認は具体的な病院名などは不要
北海道では道央などの用語が地方名に相当する
MMSEでは100-7の次は「そこからもう1回引いてください」と7を言ってはいけないが、HDS-Rでは「そこからもう一度7を引くと?」と言ってよい。MMSEでは間違えても次が正解してれば正解分を加算していくが、HDS-Rでは打ち切り。
3段階命令は3段階の命令を一度に言わなければ意味がない。
作文は文でないとだめなので氏名や住所ではダメ。
HDS-Rではさくら、ねこ、電車と、うめ、いぬ、自動車のコンビネーションは連想される言葉の上位であることが確認されて作られているため、他のものではダメ。MMSEでは互いに無関係なら何でもよい。
野菜の名前をあげていくのは農村地区や都市部という違いや男女差はないことが確認されている。
MMSEの復唱の原文は「No ifs ands or buts」でつべこべ言うな、という意味。
製薬会社パンフレットに使い道はない。そのまま返すのが唯一の正解。