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献本御礼:Dr.林の当直裏御法度―ER問題解決の極上Tips90 第2版

さすが林先生の著書です。第2版になってさらにパワーアップしています。 後期研修~指導医向けの濃い内容です。 少し内容をメモ書きで紹介いたします。

一つ目のテーマはELVO(Emergent large vessel occlusion)の話で、ICAか近位部M病変ならば24時間以内で血栓除去が推奨というこの1-2年で大きく変わった脳梗塞に対する救急診療についてから取り扱っています。最新の情報を扱ってくれているのはありがたいです。片麻痺に加えVAN(Vision, Aphasia, Neglect)のうち一つでもあればELVOを疑いましょう。 当院ではtPA投与できないですが提携病院が迅速に対応してくれるため、発症から24時間以内ならば相談することが増えています(デバイスの保険収載の時間の問題は皆さんどうしているのでしょうか?)。時代の流れからはペナンブラをMRIで評価できるASL:Arterial Spin Labelingがあると今後便利とは思われ、当院にもASLが撮像できるMRIを導入する話がありましたが、残念ながら見送られました。

機械的閉塞を腸閉塞、麻痺性イレウスをイレウスと呼ぶように急性腹症ガイドラインで用語整理されたことは知らなかった。イレウスの発音もイリアスが正しいらしい。

末梢静脈の超音波穿刺は深さ1.5㎝以下で太さ4㎜以上のものを狙うとよい。

脳圧亢進の視神経鞘エコーを見るときにはテガダームで目を覆うとよいと書いてありました。

実はこれをテーマに論文書いたことがありますが、その時にいろいろ試した結果、当院では食品用ラップを使っています。考えることはおなじですね。

心房細動をみたら肺塞栓、高K血症、甲状腺機能亢進症を見逃すな。林先生はゴロ作りが上手だが、ゴロになっていないものでも良いパールが多い。

乳児のALTE:Apparent life-threatening eventと呼ばれたものは現在はBRUE:Brief resolved unexplained eventsと名前を変え、低リスク群であれば予後は良好であることが分かってきている。小児科のない当院ではやはり定期的に小児科の勉強・アップデートをしないといけないなあ。

TEN-4ルール 4歳以下はTorso Ear Nose(体幹・耳・鼻)に皮下出血があれば虐待を疑う 4カ月以下はどこに皮下出血があっても虐待を疑う

熱いシャワーで治る嘔吐はCanabinoid hyperemesis syndrome。マリファナ中毒に出会ったことはありませんが、特徴的なので一度聞いたら忘れませんね。一方でマリファナは抗がん剤の嘔吐に対する治療法としても知られています。

ACSに対するMONA神話の崩壊(アスピリンだけが優秀) モルヒネは抗血小板薬の効果発現遅延がおこる。NSAIDは禁忌。だからニトロで効果ない時に初めて使うクスリ。 酸素はSpO2 94-98%目標で全例では入れない ニトログリセリンの舌下投与はエビデンスなし。右室梗塞、バイアグラ内服中などは禁忌。下壁梗塞に関わらず血圧下がることあり。

超難治性アナフィラキシーの裏技 アドレナリンでダメならばグルカゴンを使うことまではさほど珍しくないかも知れません。でもほかにもメチレンブルーとオマリズマブも裏技としてあります。なかなか使う機会はないかも知れませんが。

Konius症候群はアナフィラキシーによる炎症メディエーター放出により冠動脈スパズムが起こるもの。冠動脈閉塞や血栓ができることもあります。嫌酒薬服用中の飲酒で同様なことがおこることもあります。

ペニシリンと第1セフェムの交差反応は10%とされてきたが、実際には0.8-1%。ただしサワシリン、ケフラール、ケフレックスの側鎖はにており30%で交差反応。

院外心肺停止の蘇生中止判断は難しい。心経予後良好で退院できる人の99%が37分以内に心拍再開している⇒37分がんばるのがよい??

皮下膿瘍は血管テープや滅菌グローブの手首の部分を切って、loop techniqueでドレナージするとよい。

釣り針はString-yank methodで一気に引っこ抜く。受診者が少ないのは市内だからでしょうか。福井では多そうですね。

暴行罪と器物損壊罪は警察が動く。威力業務妨害罪、強要剤、恐喝罪、住居占有剤では警察は来てくれない。警察官職務執行法(泥酔患者の対応)は皆さんが感じている通り。他の患者さんに迷惑で2回通告・写真や動画で証拠があれば警察は動く。

診断書発行に関して”次の方が痛みが強いので次の日に診断書発行がおすすめ”、”交通事故と因果関係が薄れないように早めに専門外来受診がよい”。

久々の家族に話しかけられたら”その後、いかがですか?” その理由は本文をお読みください。

臨床に役立てることができるように、幅広い内容を扱いながらも深さを失っていない良書です。

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