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京都府医師会で講演しました


倦怠感はLow yieldの症候です。ほぼすべての疾患が倦怠感を呈しますのでそれだけでは診断を絞ることは困難です。倦怠感はアプローチするのが最も困難な症候と言っても過言ではないでしょう。

食欲低下や倦怠感といったLow yieldの症候に対しては+αの症候を探すのが鉄板です。発熱、呼吸困難、リンパ節腫脹などがその例の一つですが、今回はあえて傾眠を伴うかどうかで分ける方法を紹介しました。

傾眠を伴う場合、睡眠の時間・リズム・質、内科的疾患、薬物の影響、心因性疾患、病的な過眠を考えて行きます。中途覚醒後に寝付けない場合は心的要因を考えた方がよいでしょう。長時間ベッド上にいても入眠障害や中途覚醒が目立つ場合は特発性過眠症は考え難いので、生活指導や心理社会背景へ踏み込む必要があります。

SASのスクリーニングはSTOP質問:いびき、日中の倦怠感、無呼吸目撃、高血圧のうち2つあれば陽性です。最近はいびきを客観的に評価できるアプリもあり一人暮らしの場合は参考になります(”いびき”のキーワードで複数の無料アプリが見つかる事でしょう)。

倦怠感は病歴、身体所見が大切です。検査で診断がつくのは5%しかありません。一般的な採血にはCa、甲状腺を忘れずに。食欲低下/体重減少や低血圧を伴えば副腎不全も忘れてはいけません。貧血を伴わない鉄欠乏も倦怠感の原因。HCVやHIVは海外ではルーチンにすべきとの報告もあります。

甲状腺機能低下症では日中傾眠となりますが、副腎不全ではとにかくしんどいと訴えますが末期まで傾眠とはならない傾向があります。

医師も働き方改革が騒がれていますが、確かに私も研修医を終えてからも毎日15時間は病院で仕事をしていましたし、日曜休日・年末年始も全日出勤を余儀なくされていました。そうしないと手が回らず急変を防ぐことができなかったからです。今ではおかげさまでかなり労働環境は改善しましたが、研修医の労働時間制限が彼らの疲弊を減らす一方で、引き継ぎのミスを増やし、上司の負担は増える事が示されており、これらの問題解決はすぐにはされないものと思われます。(時間だけで議論するのは良くないですよね。何がストレスか、何が実のある実習と感じているか/感じさせることができるか、を議論して整備しないと、水で薄めた研修ができあがるだけだと危惧されます)。研修医の先生達が万が一、理不尽な労働環境で頑張らねばならない時には適切な仮眠を薦めます。10分ではリフレッシュ効果ありますが仕事効率は改善しません。最低20分、できれば30分の仮眠がよいと思います。個人的にはシャワーも良いと思いますが。

モニターにも疲労があります。循環器病棟のモニターの85%は不要という報告があります。不要なモニターは無意味なアラームを増やし、オオカミ少年の話のようにアラームの信頼性を損なっていきます。つまり本当に重要なアラームが鳴っても、誰一人すぐに反応しない可能性が高まってしまいます。毎日清拭後に電極を張り替える事、アラームの設定を適切に行うことでそれぞれ4割以上の不要なアラームを減らすことができます。なお、入院患者の重症度評価をモニターの有無や持続点滴の有無で判断することへの批判があります。つまり重症度加算ができるように不要なモニターや処置をしがちであるというのです。この事がせん妄を増やし、急変にも迅速に対応できなくなることにつながると考えると怖い話ですね。

医者も、患者も、モニターも疲弊してしまわない医療を行いたいものと思います。

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