総合診療2019年04月号 (通常号) 特集は
“ナゾ”の痛み 診療ストラテジー OPQRSTで読み解く
外来で、痛みを訴える患者さんに出会うことは大変多い。なかでも慢性疼痛は難治性であることが多く、診断やアプローチが難しい場合もあるが、一方で、診断がつけば治療の道筋を立てやすい疾患も多い。痛みでQOLが著しく低下している多くの患者さんに適切に向き合い、光明をもたらす1冊になればと、本特集を企画した。( 企画:片岡 仁美 先生(岡山大学病院 総合内科))
この書籍の中で私は「頭痛患者で頭が痛い ちょっと変わった一次性頭痛たち」を担当しました。
片頭痛と緊張型頭痛以外の一次性頭痛を扱いました。まずは 三叉神経 ・ 自律神経性頭痛(TACs) です。中等度以上の片側固定性頭痛で、自律神経症状を伴う場合に疑いますが、 二次性の可能性を除外する必要があります。
TCAsの分類においてはT:Time course(時間経過)とP:Palliative/Provocative(増悪・寛解因子)が大切です。短時間持続性片側神経痛様頭痛発作では神経痛様の短時間の疼痛で、皮膚刺激で誘発されることがあり、治療や予防も神経痛に準じた方法です。群発頭痛は片頭痛と同様に血管性の要因が関与しており飲酒で誘発し、治療はトリプタン、予防にはベラパミルが有効です。一方、発作性片側頭痛や持続性片側頭痛はインドメタシンが著効することが特徴の疾患です。
P:Provocative(誘発因子)が診断に大切な一次性頭痛たち
一次性咳嗽性頭痛もインドメタシンが有効な疾患ですが、50歳未満の発症、1年以上の持続、軽い咳嗽での誘発、後頭部痛、1分以上の持続、頭痛以外の神経学的症候、インドメタシンに反応なし、Valsalva法で誘発はアーノルド・キアリ奇形や後頭蓋窩病変を示唆するとされます。
寒冷刺激による頭痛に“アイスクリーム頭痛”、頭蓋外からの圧迫による頭痛に“水泳中のゴーグルやサージカルマスク着用時の頭痛”、頭蓋外からの牽引による頭痛に“ポニーテール頭痛”があり、いずれも身近な疾患です。
睡眠時頭痛は通常50歳以降で発症する疾患で、月に10日以上、3カ月を超えて睡眠中のみに頭痛を認める場合に診断されますが、睡眠時無呼吸,夜間の高血圧,低血糖,薬剤乱用, 悪性腫瘍を除外する必要があります。夜中に中等度以上の頭痛により覚醒する事が多いため“目覚まし時計頭痛”も呼ばれます。
他に 一次性雷鳴頭痛 、一次性運動時頭痛、性行為に伴う一次性頭痛、 一次性穿刺様頭痛 ( アイスピック頭痛 )、 貨幣状頭痛 、 新規発症持続性連日性頭痛 について簡単に解説しています。
比較的まれな頭痛たちですが、日常診療をしているとこれらの幾つかには必ず出会いますので若い先生方にはこれらの疾患についても知っておいて欲しいと思います。